データイーストがおくる対戦格闘ゲーム・ファイターズヒストリーより、
安藤美穂子・酒井省吾・濱田誠一作曲、ダイナマイトの『ミゾグチ ステージ』。
溝口誠のテーマとして彼と対戦するステージで流れます。
曲者揃いのキャラと弱点システムによる攻防を特徴とするファイターズヒストリーシリーズの2作目にあたる本作。前作の激闘から一年後、再び謎の格闘王・Kによって開催されたグレートグラップルにて闘士たちが拳を交えることになる。相変わらず濃さ全開で新規参戦2名を加えたキャラたちや、弱点部位を突いて気絶させる弱点システムは健在である。前作では6ボタン(弱・中・強のパンチとキック)式だったが、本作では中攻撃を除いた4ボタン式に改められた。新たにワンツー攻撃という仕様が導入され、弱攻撃に続けて強攻撃をタイミングよく繋げることで弱攻撃の隙をキャンセルして連続で畳みかけられるようになった。複雑なゲージ管理など一切存在しない代わりに、事前説明なしでキャラ別に種々様々な必殺技が隠されていて、ボタン数が減っても取れる行動は豊富に用意されている。総じて骨太で肉厚な駆け引きを楽しめる仕上がりとなっている。後に家庭用ネオジオ、ネオジオCD、セガサターンに移植されたほか、アーケードアーカイブスの一環としてPS4、Xbox One、スイッチ、PC向けに配信された。
本作の音楽を担当するのは安藤美穂子氏、酒井省吾氏、濱田誠一氏。スタッフロールではそれぞれSEILAH、SHOGO、ATOMICという名義でクレジットされている。また、同じサウンド欄にてTOM(佐藤共良)氏とKOREMASA(岩崎正明)氏の名前が確認できるが、サウンドトラックのコメントによれば作曲担当ではなくサウンドドライバ制作や打ち込みなどを手がけていたようである。いずれも当時データイーストに所属していた作曲家である。このうち安藤氏は前作から引き続き作曲に携わっている。ギラギラと迫力のあるサウンドは本作でも健在で、ギターやオルガンのゴツい音色を中心にところどころジャズやアジアンテイストの曲調を取り入れている。サウンドトラックについては、同時期に稼働していたフライングパワーディスクとのカップリングでアレンジやボイス集なども含めて収録したものと、攻略DVD付きでオリジナル音源を完全収録したパーフェクト盤が存在する。サントラによって曲名の表記が異なるが、ここでは後者の表記に倣うものとする。
溝口誠のテーマとして彼と対戦するステージで流れるのがこの曲である。溝口は自称喧嘩百段、28歳だが留年中の現役高校生たる浪花の熱き漢で、本シリーズを代表するキャラである。ステージはネオン煌めく道頓堀の戎橋で、彼を応援する群衆が見守っている。人物設定も口調も技の迫力も際立っているなかで、この曲は派手さの片鱗は感じられるものの意外と落ち着きがあるフュージョン系のナンバーに仕上がっている。グルーヴィーなクラヴィネットを軸に、5秒頃から聴こえる金属音、7秒や14秒などフレーズ置きに鳴り響くシンバルを組み合わせることで、絶妙に渋くて絶妙に鮮やかなオーラを漂わせる。14秒以降はブラスが朗々と吼えて華やかさが増し、締めの26~30秒にはエレキギターのシャープな音色を交えて格好良く決める。どっしり構えつつ不思議と愛嬌のある一曲である。
この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。ピンチ時には『ミゾグチ HURRY UP』というスピーディーなアレンジがかかるほか、ネオジオCDでは酒井さん編曲でハードボイルド感があるアレンジになっていますね。あわせてどうぞ。