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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1528 『The Old Watchtowers』(David Fenn/Death's Door/XOne・XX|S・PC)

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Acid Nerveがおくるアクションアドンベンチャー・Death's Doorより、

David Fenn作曲、『The Old Watchtowers』。同名のマップで流れます。

イギリスの二人組のインディーゲームチーム・Acid Nerveの代表作にあたる本作。死者のソウルを刈り取るカラスたちの結社に属する主人公は、刈るはずのソウルを何者かに横取りされたことをきっかけに、潜む陰謀と死神の扉をめぐる謎に迫ることになる。独自の死生観とユーモアが入り混じった作風が印象的な、往年のゼルダライクな見下ろし型アクションアドベンチャーである。剣や弓をはじめとする武器や、戦闘と謎解きの双方で役立つ遠距離魔法を駆使し、ギミック豊かなマップを攻略していく。マップにはショートカットや隠しエリアがふんだんに用意されていて、一度訪れた場所でも新たな技能を入手して再訪すれば新たな発見があるため、探索し甲斐のあるつくりに仕上がっている。戦闘はテンポよく軽快だが適度に歯応えがあり、死に覚え系とまではいかないまでも敵の攻撃パターンや周囲の地形などを把握して対処する機敏さが試される。総じて魅力的な世界観のもとで各要素の均整が取れた堅実な仕上がりとなっている。後にスイッチ、PS4、PS5、アプリに移植された。

本作の音楽を担当するのはDavid Fenn氏。二人組から成るAcid Nerveの片割れであり、作曲に加えて本作のプロデューサーとデザイナーを兼任している。本作はやや暗めのトーンで粘土細工のような質感のグラフィックが目を引くなかで、音楽はそうした雰囲気にぴったり寄り添ったメランコリックで民族風味の響きを帯びている。ピアノやピッコロ、ストリングスを軸に、美しさと勇ましさとやるせなさが綯い交ぜになったような上質なサウンドが取り揃えられている。複数の楽曲でメインテーマの旋律をうまく融け込ませることで統一感を出している。サウンドトラックは各種デジタルストアで配信されているほか、氏のYouTubeチャンネルで全曲公開されている。

The Old Watchtowers(日本語名は「古い物見の塔」)で流れるのがこの曲である。終盤のマップであり、降りしきる雪のなか、フックショットで足場を乗り移りながら進んでいく。決然とした響きを纏ったピアノとストリングスのイントロから始まり、15秒から笛の音が聴こえ出すと、徐々にクライマックスらしい切なさと力強さを蓄えていく。23秒から本格的に笛が合流し、儚くも華やかで張りのあるハイトーンを奏でる。さらに38秒には深みのあるコーラスが加わり、47秒にはストリングスが勢いを強めることで、憂いを帯びつつ盛り上がっていく。56秒から再び笛の見せ場があり、直後にストリングスにバトンを渡して丁寧に盛り上がりを積み重ねる。だいぶ満ちてきたところで1分34秒でサビに入るかと思いきや、そのまま違和感なくループに突入する。見事な曲構成で生と死の狭間で使命を果たすカラスの旅路を表現した一曲である。

これまでの物語の流れやマップの雰囲気にすごくよく合っていて、作中で聴くとうわっとなります。なのでもっと直感的に言い換えれば、うわっな一曲です。