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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1569 『いにしえの遺跡』(谷岡久美/ダイスDEチョコボ/PS)

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スクウェアがおくるメモリアルソフト・チョコボコレクションより、

谷岡久美作曲、ダイスDEチョコボの『いにしえの遺跡』。同名のマップで流れます。

FFシリーズのマスコットキャラであるチョコボの登場10周年記念ソフト・チョコボコレクションの収録作品のうち、唯一のオリジナル作品にあたる本作。突然現れたクリスタルのダイスによって異世界に送られたチョコボと仲間たちは、クリスタルによって豹変した仲間を正気に戻すべく競い合うことになる。すごろく風のマップでサイコロを振って土地を購入して資産管理する、いわゆるモノポリー型のボードゲームである。ソロ向けにストーリーモードとクリア後のやり込みマップ、マルチ向けに最大4人までの対戦モードが用意されている。本作の特色は魔石による戦略要素で、土地を購入するには通貨のCPの他に友達魔石が必要で、マップ周回時や特定のマスに止まった際に入手しておくのが肝要である。友達魔石に宿るモンスターに土地の番をさせることで、ライバルがその土地に止まったときにCPを徴収しつつ魔石に応じた効果が発揮される。また、攻撃魔石を使ってライバルを妨害することも可能で、友達魔石の効果と合わせて動きを封じたり出目を固定させたりして、いかに自分にとって有利な状況を形作るかが攻略の鍵となる。さらに土地の増資、乗っ取り、友達魔石の複数配置などの駆け引きもある。総じて作風の可愛らしさとボードゲーム特有の面白みを兼ね備えた仕上がりとなっている。後にGBA向けにリメイクされた。

本作の音楽を担当するのは谷岡久美氏。当時スクウェアに所属していた作曲家である。チョコボコレクションに同梱されている他2作(チョコボスタリオンチョコボレーシング)では作曲していないが、本作以前にもチョコボが主役の作品としてチョコボの不思議なダンジョン2に携わった経験がある。なお、GBA版のチョコボランドではアレンジおよび追加曲の作曲を関戸剛氏が担当している。本作の音楽は、他のチョコボ作品でみられるようなFF由来の楽曲を用いるスタイルではなく、シリーズ伝統のチョコボのテーマ以外は基本的にオリジナル楽曲で固められている。笛や弦のピチカートなどをふんだんに取り入れた、柔らかくこぢんまりとしたサウンドが取り揃えられている。サウンドトラックは未発売だが、チョコボランドサウンドテストが搭載されている。

いにしえの遺跡で流れるのがこの曲である。クリア後に追加される最難関マップで、FF5でおなじみの隠しボスであるオメガと神竜を対戦相手として両方同時に挑むことになる。こちらの攻撃魔石は一切効かず、相手はトップクラスの徴収額を持つ専用の友達魔石で土地を搔っ攫っていく。そうしたなかでも流れる曲は穏やかで、ハープやシェイカー、弦のピチカート、グロッケンなどを散りばめて素朴な雰囲気を醸し出す。10秒からフルートの調べが加わると、朗らかで親しみやすいけれどミステリアスでもある独自の聴き心地を生む。30秒でストリングスが張り詰めた高音を響かせると、あわせてグロッケンがきらりと繊細な音色を奏で、さらに低めの音域で笛を鳴らし、仕上げに40秒あたりでグリッサンドで音階を急降下させてドラマチックな間奏を披露する。その後、50秒頃からストリングスが聴こえ出すと徐々に流れが変わり、1分以降で新パートに入る。フルートやストリングス、ハープが甘美で幻想的な音色を紡ぐ傍らで、堅く鋭いウッドブロックの打音を添えることでリズミカルな印象を与え、やがてシェイカーが再度加わるとじわじわと盛り上がっていく。1分半過ぎにはだいぶ壮大な曲調になるが、1分43秒で一転して軽やかに増えを奏でて元に戻る。安らかであると同時にプレッシャーを感じさせる不思議な一曲である。

至福ですね。