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#1471 『危険な予感』(Falcom Sound Team jdk/Vantage Master/PC)

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日本ファルコムがおくるシミュレーションRPGヴァンテージマスターより、

Falcom Sound Team jdk(新井智・小原要・園田隼人・白川篤史・中島勝)作曲、

『危険な予感』。火山で流れます。

ファルコム製のWindows 95向けの完全新作として登場した本作。大陸と近海の島国から成る世界を舞台に、地、水、火、天の四素に紐づく精霊・ネイティアルを操る18人のマスターが各々の思惑を胸に相争うことになる。シナリオ、エキスパート、フリーバトルの3つのモードが収録されていて、シナリオでは開始時に心理テストの要領で質問に答え、回答結果に応じて割り振られたマスターの視点から物語を進めていく。一口にシミュレーションRPGと言っても育成要素が薄く偶然性を取り払ったゲーム性が特徴で、まるでチェスのような読み合いと戦略を重視している。具体的には、魔晶石(MP回復リソース)が散らばるHEX制のマップで、全24種のネイティアルを召喚し、各ユニット一律で10ポイントあるHPを削り合い、先に相手のマスターを倒したほうが勝利する。属性相性や地形の影響に加え、時間帯の概念があり、ユニットによっては昼夜で能力が変動するため、いつどこで誰を相手取るか慎重に見極める必要がある。エキスパートでは劣勢から始まって逆転を目指す高難度の盤面が用意されていて、フリーバトルでは好みの設定でローカル対戦やCPU戦をおこなうことができる。ファンタジー世界で合理的な駆け引きを楽しめる仕上がりとなっている。後に通信対戦機能などの追加要素を備えたV2が発売されたほか、PSP向けにリメイクされた。

本作の音楽を担当するのはFalcom Sound Team jdkの面々。具体的な内訳は新井智氏、小原要氏、園田隼人氏、白川篤史氏、中島勝氏である。このうち白川氏が本作のサウンドの中心的な立場を担っているが、主に効果音制作を手がけている模様である。また、園田氏と小原氏は当時新人で、本作が実質的なデビュー作である(園田氏は本作発売に先駆けてファルコムラシックスにも携わっているが、そちらはファルコム製3作品をまとめたコレクションである)。本作の楽曲はファンタジーRPGならではのシンセとオーケストラを駆使した華美な雰囲気と、じっくり思考を巡らせるシミュレーションらしさを追求した重厚で緻密な作風がうまく絡み合っている。音源はMIDICD-DAの両方に対応している。サウンドトラックについては、本作およびV2の追加曲を収録したものがデジタル配信されているほか、PSP版の初回特典として本作とPSPアレンジ音源(編曲は神藤由東大氏による)を収録したものが付属された。

火山で流れるのがこの曲である。溶岩に囲まれた厳しい地形のマップを彩るにあたって、手始めにティンパニを叩き、直後にストリングスとブラスの息もつかせぬアンサンブルで畳みかけることで、開始早々から身の毛がよだつような危機感を植え付けてくれる。11秒からすこし勢いが鎮まり、ハープやグロッケンシュピールなどの煌びやかできめ細やかな音色を交えるようになるが、22秒でまた勢いづくと、きめ細やかな音色を鳴らし続けながら大胆不敵な演奏を紡ぐ。全体としては非常に威圧的な曲調だが、54秒以降で主旋律にグロッケンを持ってくるくだりは不思議と心地良さに満ちている。グロッケンが抜けた後、1分15秒からピッコロが鳴り始めると、冒頭のストリングス並みに切羽詰まった速弾きを披露するが、木管楽器ならではの柔らかな音色のおかげで引き続き心地良い印象を与えてくれる。1分26秒でピッコロに加えてストリングスも一緒になってざわめき出すと、柔らかさと鋭さがものの見事に融合する。焦燥と神秘が綯い交ぜになった一曲である。

響きの差はありますがほぼ忠実なMIDI音源版と、グロッケンの代わりにコーラスをフィーチャーして危険な予感が強まったPSPアレンジもあわせてどうぞ。

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