VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1472 『In to the Depth』(山西浩一/ドラゴンファイター/FC)

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ナツメがおくるアクション+シューティング・ドラゴンファイターより、

山西浩一作曲、『In to the Depth』(『ステージ3』とも)。3面で流れます。

ナツメ製の初期の作品の一つである本作。北方からやってきた混沌の魔道士・ザバオンによって廃墟と化した国を救うべく、神に遣わされたドラゴンファイターが北の山へと旅立つことになる。全6面から成るサイドビュー形式のアクション兼シューティングで、通常時は人間の剣士の姿で任意スクロールで進めるが、敵を倒してゲージを溜めてドラゴンに変身すると強制横スクロールシューティングに切り替わる。ドラゴン変身時は空を飛んで火を吐けるようになり、ゲージが尽きるか自力で解除するまで姿を保つことができる。この変身システムこそが本作最大のギミックであり、それ以外には道中に目立った仕掛けはなく地形の変化に乏しい。とはいえ敵の動きが巧みで覚え要素が強いため、そこそこ手ごわい難度を誇る。特筆すべきはスムーズな操作感と良好なレスポンスで、人間の姿で剣を振るときもドラゴンの姿で暴れ回るときも、変身するときも解除するときも、簡潔なボタン入力で瞬時に各種動作を繰り出すことができる。総じて軽快にまとまった仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは山西浩一氏。スタッフロールではUKKARI YAMANISHI名義でクレジットされている。当時ナツメに所属していた作曲家で新人だったらしいが、在籍期間が短かったのか、担当作品は本作含め1990年8月~9月発売のものに集中している。同じくナツメ所属の代表的な作曲家である水谷郁氏と共同で作曲することが多いが、本作は唯一例外的に山西氏が単独で作曲している(水谷氏はサウンドマネージャーを務めている)。本作はファミコン円熟期の作品だけあって音楽の水準は安定して高く、前のめりなリズム感と熱いメロディーラインをたっぷり堪能することができる。また、作中には曲名表記ありのサウンドテストモードが隠し収録されている。サウンドトラックについては、ナツメの往年の作品群をまとめたRom Casette Disc In NATSUME Vol.1のなかに本作の楽曲が含まれる。ただしそちらでは曲名は使用場面に即して事務的に名付けられているため、ここではサウンドテストの表記に倣うものとする。

3面で流れるのがこの曲である。湖底の神殿のような場所を舞台とするステージで、見渡す限り水だらけで青色の背景が続き、道中では水棲生物や半魚人が襲ってくる。そうしたなか、初めは等間隔で音色を上下させながらシリアスなムードを形作る。10秒からドラムが勢いづいて鮮やかなハーモニーを奏で出すと、徐々に疾走感を帯びるようになる。20秒過ぎで主旋律が入るとスピーディーな印象がぐっと強調され、22~23秒や28~29秒で高速で音階を駆け上って木霊するようなフレーズを挟むことでますます疾駆する感覚が強まっていく。そのうえさらに32秒から高音を駆使し、非常に顕著に耳に残るメロディーを奏でてどんどん盛り上げてくれる。ラストスパートとなる43秒以降では、気持ち良く伸びる高音を用いて勇ましく清涼感のある雰囲気を生み出す。たとえ深い水底であっても情熱の火を絶やさずに戦い続けるシチュエーションにぴったりな一曲である。

ラストステージのBGMと言っても通用しそうですが、それはこの曲に限らず1面からしてそうですね。1面は雪降る山麓ですが、流れる曲(『The Frozen Battle』)はいきなりクライマックス並みの燃え上がる勢いがあります。あと4面の『Can you Chain Up』も良いですね、聴いていると突き動かされる感じがします。あわせてどうぞ。

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