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#1294 『DESOLATION CANYON』(岩月博之/ワイルドガンズ/SFC)

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ナツメがおくるガンシューティング・ワイルドガンズより、

岩月博之作曲、『DESOLATION CANYON』。2面で流れます。

ナツメ製の家庭用機向けオリジナルガンシューティングとして登場した本作。全宇宙を股にかける賞金稼ぎのクリントは、悪名高い海賊キッドにより一族郎党を殺された大地主の娘・アニーの依頼を請け、共に奴のねぐらである惑星アレクスへ殴り込むことになる。2Dだが奥行きの概念を持つ固定画面で展開する全6面構成の残機制シューティングで、宇宙の時代を描きつつも物語・ステージ背景・人物描写など様々な面で西部劇のテイストが漂っている点が特徴である。画面奥の敵に照準を合わせて狙い撃ち、画面手前に飛んでくる敵弾をジャンプやローリング等で回避するというのが主な流れで、照準と移動を適宜処理しながら攻略していく。通常の銃撃に加え、投げ縄で敵を鈍らせたり、ボンバーで敵を一掃したり、敵が投げたダイナマイトを抛り返したりといった多彩なアクションが搭載されている。また、画面内のオブジェの多くは破壊可能で、キャラの動きもステージデザインも破壊行為に対するレスポンスも丁寧につくり込まれていることから、活き活きとした爽快感を味わうことができる。2人同時プレイにも対応していて、SF西部劇らしいスリルとテンションをたっぷり楽しめる秀作に仕上がっている。後にPS4、Steam、スイッチ向けにリメイクされた。

本作の音楽を担当するのは岩月博之氏と大橋春男氏。岩月氏はナツメ(現:ナツメアタリ)に所属する作曲家である。大橋氏に関しては情報がすくないが、本作をはじめ90年代中頃のナツメ製の作品に複数関わっていたことで知られる。このうち岩月氏が本作の大半の楽曲を作曲していて、大橋氏の担当分は少数に留まる。本作では思い切りウェスタンに振ったインパクト抜群なサウンドが揃っていて、ドラムやギター、口笛などをふんだんに用いた芯のある楽曲を堪能することができる。リメイクの際には岩月氏が全曲を原曲に忠実な方向性でアレンジしたうえで、追加曲の作曲も手がけている。サウンドトラックについては、ナツメ作品群をまとめて収録したRom Cassette Disc In NATSUME Vol.1のなかに原曲音源が収録されているほか、リメイク音源やボーナスアレンジとあわせて収録されたものも存在する。

2面「DESOLATION CANYON」で流れるのがこの曲である。なお、最初と最後のステージ以外は順不同で攻略可能であるため、必ずしも2番目に訪れるとは限らない。直訳で「荒廃峡谷」を意味する題名にふさわしく、前半は恐竜の骨らしきものが埋まった荒れ地を舞台に、後半は谷間の水源地を舞台に戦うことになる。イントロこそ勢いよく飛び出す音色で始まるが、以降はやや抑えたノリで、渋く掻き鳴らされるギターと、6秒から加わる口笛の主旋律が印象的に響く。いかにも西部劇サウンドの王道を征くような、仄かな哀愁と確かな情熱が綯い交ぜになった調べを奏でることで、世界観の味わい深さにどっぷり浸からせてくれる。30秒頃からはシンセの伴奏が存在感を増し、主旋律を支える役割を果たしつつ、35~36秒や40~41秒などでメロディーの合間を補完するようにうまく音色が配置される。54秒で口笛とシンセの勢力が反転し、シンセが主旋律、口笛が伴奏を担うようになると、相変わらずノリは抑え気味でもしっかりと魅せる盛り上がりを披露する。切れ目なく紡がれるギターとドラムのリズミカルな掛け合いとも相まって、非常に心くすぐられる一曲である。

このコクのある音使いがすごく好きです。リメイク音源は原曲を踏襲しつつクリアな聴き心地になってます。あわせてどうぞ。

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