VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1064 『戦闘』(水谷郁/カオスワールド/FC)

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ナツメがおくるRPG・カオスワールドより、

水谷郁作曲、『戦闘』(『バトル1』とも)。通常戦闘で流れます。

上記動画の7:53から9:08まで。

ファミコン末期のオーソドックスなRPGとして登場した本作。邪悪なる者の復活と世界の破滅が予言され、魔物が活発化した世界を舞台に、病に伏せた王女の薬を探すべく旅に出た冒険者の主人公は、行く先々で様々な事件に巻き込まれることになる。開始時に主人公の性別と職業(ファイターやプリーストなど7種類)を選択できるキャラメイク機能が搭載されていて、選ばなかった性別と職業のキャラは仲間として登場する。特筆すべきはオートで進行する戦闘システムで、大まかな作戦こそ指示できるが、プレイヤーが能動的に介入する要素はなく、自動でテンポよく進む戦闘シーンを見守ることになる。各地にあるギルドで自由にパーティ編成したり仕事を受けたりすることができて、程よい自由度とゲームバランスを両立している。王道なファンタジーテイストで手堅くまとまった仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは水谷郁氏と、NANTEN IWATSUKIこと岩月博之氏。水谷氏は当時、岩月氏は現在もナツメ(現ナツメアタリ)に所属している作曲家である。岩月氏は同時期にいくつか担当作品があるなかで、おそらく本作がデビュー作であるが、ごく少数の作曲に留まっていて、楽曲のほとんどは水谷氏が手がけている。本作ではスタンダードなファンタジーRPGの作風にあわせて、フィールド曲も街曲も戦闘曲もよくつくり込まれた上質なサウンドが揃っている。サウンドトラックはアレンジ含めて本作単体で収録されたものと、後年になって他のナツメ作品と一緒に収録されたものが存在し、両者の間で曲名が異なるため、ここでは後者の表記に倣うものとする。

通常戦闘で流れるのがこの曲である。前述の通り戦闘はオートで進行し、サイドビュー形式で敵味方が戦うアニメーションを眺めていれば自然と決着がつく。事前に作戦を選ぶ以外は実質的に傍観するだけだが、イントロからさながらファンファーレのような猛々しい音色を響かせることで、戦闘の臨場感を存分に高めてくれる。勇ましくもどこか哀しみを帯びたメインメロディーが、瞬く間に耳に馴染むような没入感を生む。20秒手前(8:12)ですこし流れが変わり、主旋律と伴奏がそれぞれ複雑に音階を上り下りすると、元々シリアスだった曲調にさらに磨きがかかる。その後も勢いを保ちつつ、34秒(8:27)頃にはイントロに回帰してループする。オート戦闘ながらも音を通じて緊迫したテンションを感じ取れる一曲である。

曲尺はそう長くないですが、戦闘が割とすぐ終わるので最後までじっくり聴ける機会はすくないかもしれません。