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#1063 『五条坊門通』(一木裕樹・衛藤英幸・末永浩一・松本大祐・南亜矢子/義経英雄伝 修羅/PS2)

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フロムがおくる歴史合戦アクション・義経英雄伝より、

一木裕樹・衛藤英幸・末永浩一・松本大祐・南亜矢子作曲、修羅の『五条坊門通』。

五条大橋で流れます。

源平合戦を題材とする無双系のアクションとして登場した義経英雄伝のアッパーバージョンにあたる本作。源義経を軸とした義経篇に加え、新たに木曽軍の様子を描く義仲篇と宿敵側の平家篇がメインストーリーに搭載された。無印版はプレイアブル武将は総勢10人だったが、本作では32人にまで増え、それに伴ってステージやアクション、武器、作戦などの各要素が追加された。システム面では味方部隊への指示出しを肝としたゲーム性はそのままに、単独で作戦を発動できる刹那の策や、使い込むほど強化される作戦成長システムが導入された。また、チュートリアルが充実したり、2P対戦モードに対応したりするなど、広範にわたって追加要素が含まれる。アクションやグラフィックはやや地味だが、史実を踏襲した硬派なスタイルで源平の独特な世界観を描いた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは一木裕樹氏、衛藤英幸氏、末永浩一氏、松本大祐氏、南亜矢子氏。いずれも当時フロムに所属していたか、現在も所属している作曲家である。このうち末永氏と南氏(本作のメインサウンドデザイナー)は無印版でも作曲しているが、無印版のメインサウンドデザイナーだった神田有士氏は不参加である。また、一木氏も無印版にサウンドデザイナーとしてクレジットされているが、作曲はおこなわずバイオリン演奏などを手がけていたようである。無印同様、本作のスタッフロールには個別の作曲欄はなく、すべてサウンドデザイナー表記で統一されているため、五名のうち何名が作曲担当かは判然としない。本作では落ち着いた悲愴感を漂わせる楽曲を中心に、無印版にはなかった新曲が複数収録されている。サウンドトラックについては、無印版のものは発売されているものの、本作の追加曲は未収録であるが、作中にサウンドテストが存在する。

義経篇の「五条大橋」で流れるのがこの曲である。このステージは、真夜中の平安京を舞台に牛若(義経)と弁慶が初めて相対し、決闘する逸話を再現したものである。太鼓のみの静かなイントロで始動し、6秒頃にピアノと弦の音色が加わると、その繊細な響きが幻想的な美しさを印象付ける。35秒でようやく主旋律が入り、静謐さのなかに哀愁と神秘を存分に滲ませる。主旋律が弦から管楽器に移り変わり、物憂げだが実り豊かなメリハリを見せた後、1分半過ぎにピアノが途絶えて弦楽器による甘美な間奏が奏でられる。太鼓とピアノが再度加わると、よりいっそう儚くも凛々しく盛り上がる。夜の闇を縫って奇跡的な邂逅を果たすシーンを、幽玄で深遠な曲調で彩る一曲である。

戦いを穏やかな音楽で彩るセンス、素敵ですよね。同じくピアノと弦主体で、雨乞いで流れる『憂国舞姫』も素敵です。静御前のテーマという感じですが、こんな淑やかな曲調でも戦場で流れます。あわせてどうぞ。

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