阿知波大輔作曲、アニーの『荒野へ』。火口で流れます。
錬金術をテーマとするアトリエシリーズのうち、開発を外注しているDS三部作の第2弾にあたる本作。錬金術士の家系に生まれるも極度の面倒くさがりの少女・アニーは、祖父の意向で強引に王国北方の孤島・セラ島のリゾート開発計画に参加させられるが、リゾート開発に最も貢献した者は王子と結婚できると聞き、嬉々として玉の輿を目指すことになる。三年のタイムリミットのなかで錬金術の腕を磨き、冒険者ギルドの依頼をこなしながら、半月に一度の大会で賞金を稼いでリゾート施設を建造していく。調合システムは材料とレシピを選択してアイテムを作成する簡素なつくりで、中和剤を媒介するなどして成果物に特徴を付与することができる(納品依頼などでアイテムの特徴を指定されることがある)。進行度に応じた複数のエンディングが用意されていて、ほのぼのとした雰囲気ながらも時間管理に追われるシミュレーション的な側面を持つ、シリーズの原点回帰風の路線を味わえる。UI面の分かりづらさはあるが、携帯機らしく手軽に遊びやすい仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは阿知波大輔氏。当時ガストに所属していた作曲家である。アトリエシリーズには1作目のマリーから参加していて、DS三部作については前作こそ不参加だが、本作と次作のリーナでは主題歌も含めて単独で作曲している。本作ではリゾートを舞台にした可愛らしい作風に見合った和やかな楽曲が多く揃っていて、脱力感のあるコミカルな曲調はもちろん、戦闘曲はシリアスな曲調、フィールド曲は冒険心をそそる民族音楽調など、アトリエシリーズらしい幅広いサウンドを楽しめる。サウンドトラックは主題歌やオフボーカル版も含めて収録されている。
火口で流れるのがこの曲である。採取地の一つで、文字通り火山の噴火口である。厳然とした景色にふさわしい荒涼感のある音色が印象的で、ブズーキと思しき撥弦楽器にパンフルートの主旋律が加わることで、非常に味わい深い臨場感を漂わせる。はじめはほぼパンフルートの独奏だが、14秒頃から伴奏が入ると、カスタネットをはじめとする打楽器の歯切れの良いリズムが快く響き渡る。30秒前後から始まるサビでは、華やかな主旋律の裏で低音域のベースが渋い仕事ぶりを見せ、軽快だが哀愁も感じさせる絶妙な聴き心地を生む。1ループ1分未満で人里離れた厳しい自然環境ならではの雰囲気を的確に表現した一曲である。
そんなに似ているわけではありませんが、なんとなくFFCCEoTのメインテーマを思い出します。