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#1292 『渇いた巡りの地』(柳川和樹/ライザのアトリエ2 ~失われた伝承と秘密の妖精~/NS・PS4・PS5)

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ガストがおくる錬金術RPG・アトリエより、

柳川和樹作曲、ライザ2の『渇いた巡りの地』。北の大地で流れます。

錬金術士の日々の奮闘を描くアトリエシリーズのうち、副題に秘密を冠する作品の第2弾にあたる本作。前作の大冒険から3年後を舞台に、なんてことない毎日に戻っていた錬金術士・ライザは、故郷の村では謎の石の調査を頼まれ、海を越えた王都からは友人より遺跡の探検に誘われたことをきっかけに、調査がてら王都へ旅立つことになる。アトリエシリーズでは珍しい主人公続投のナンバリング続編で、すこし成長したおなじみの仲間たちとの再会や、年上・年下・異種族も含む新キャラとの出会いと交流を楽しむことができる。調合システムは前作を踏襲しつつ、新要素として投入することで属性を変化させられるエッセンスや、作成したアイテム同士を掛け合わせるエボルブリンクなどが追加された。戦闘については引き続き3人編成でリアルタイム進行だが、戦闘中に交代可能な4人目を設定できるようになったほか、アイテムやスキルを続けざまに使用できる新システムが導入された。探索面では遺跡に散らばる手がかりを集め、手帖で情報を整理して秘密を解き明かす軽い推理要素が加わったが、物語にはさほど関わらないフレーバー程度の描写に留まっている。総じて続編としてそつなくまとまった仕上がりとなっている。後にSteamに移植された。

本作の音楽を担当するのはアサノハヤト氏、裏谷玲央氏、柳川和樹氏、松村佑樹氏、水上浩介氏、三武亜紗美氏。アサノ氏と柳川氏はかつてガストに所属していた、現在はフリーランスの作曲家で、裏谷氏は元カプコン所属のフリーランスの作曲家である。水上氏は当時、松村氏と三武氏は現在もコーエーテクモ(ガストは吸収合併を経て同社の一部となったため)に所属する作曲家である。このうちアサノ氏、柳川氏、水上氏、三武氏は前作から続投していて、裏谷氏と松村氏はアトリエシリーズの作曲には初参戦である。本作では舞台が都会に移ったことを受けて、全体的に優雅で開放的なオーケストラサウンドが目立つようになった。各地の遺跡BGMは幻想的でメランコリックな雰囲気が漂い、戦闘曲は相変わらずアップテンポでキレのあるものが揃っている。サウンドトラックは通常盤のほか、限定盤の特典の一環としてスペシャルアレンジを施したCDも存在する。

北の大地で流れるのがこの曲である。物語終盤にかけて訪れることになる北方の乾燥地帯で、だだっ広い荒野に巨大な竜骨が鎮座する。そうしたなか、この曲は眼前に広がる険阻な景色に対する畏怖を強く感じさせる曲調に仕上がっている。アコースティックギターを用いた伴奏で荒涼とした空気感を醸しつつ、主旋律のほうはバイオリンやトランペットなどをフィーチャーした壮大なオーケストラによって、厳しく勇ましく物悲しい雰囲気を生み出す。30秒手前になるとピアノとブラスを中心として、それまでの盛り上がりを保ちつつも一息つけるようなフレーズを奏でる。43秒からブラスに代わってストリングスが主旋律を担い、やおら勢いづく打楽器を伴って再び力強く伸びていく。57秒から奏でられる調べは冒頭によく似ているが、音程が半音上昇したことでますますドラマチックな響きを帯びるようになり、1分11秒でさらに音程が上がってテンションが引き上げられる。満を持して1分26秒頃からサビが始まると、弦楽器も管楽器も裏で変わらず刻み続けるギターも一緒くたになり、非常に華やかで凛々しく、なおも痛切に悲しい旋律を紡ぐ。景色にマッチした曲調であるのはもちろんのこと、冒険の終わりが近付きつつ状況にもフィットした一曲である。

ライザ3発売記念に。作曲者は異なりますが、イントロで前作の『女王の城へ』がよぎって、サビで再びよぎるような、あの惚れ惚れとした曲調の再来という感じがします。ピアノがよく映える夜バージョンの『渇いた眠りの地』もあわせてどうぞ。

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