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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#871 『空の回廊』(中河健/イリスのアトリエ エターナルマナ2/PS2)

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ガストがおくる錬金術RPG・アトリエより、

中河健作曲、イリス2の『空の回廊』。月の塔で流れます。

錬金術を題材にしたアトリエシリーズのうち、通算7作目にしてイリス作品群の2作目にあたる本作。マナの力による錬金術が存在する世界を舞台に、錬金術士の少年少女・フェルトとヴィーゼは天変地異で引き裂かれた世界を再生すべく、フェルトは剣を携えて異世界へ、ヴィーゼは元の世界に残って互いに協力し合うことになる。ダブル主人公制により、冒険はフェルト、調合はヴィーゼという形で役割分担されているのが特徴で、操作を切り替えながら物語を進めていく。戦闘システムは従来のターン制を廃し、素早さを基準に敵味方が入り乱れるアクティブコストターンバトルが導入され、行動順を遅らせたり気絶させたりするブレイクの概念が初登場した。前作で大きく路線変更したシリーズだが、本作ではその王道路線を継承しつつ、調合を軸とする旧作の魅力もうまく取り入れた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは阿知波大輔氏と中河健氏。いずれも当時ガストに所属していた作曲家である。阿知波氏は1作目のマリーから、中河氏は5作目のヴィオラートからシリーズに参加していて、前作では同じくガストの土屋暁氏も含めた三人体制で作曲していた。本作では前作同様、剣と錬金術のオーソドックスなファンタジーの作風にあわせて、爽やかなシンセと民族音楽を中心とした良質なサウンドが揃っている。また、次作から音楽がストリーム再生に対応するようになるため、本作は対応前の最後の作品である。サウンドトラックは通常盤のほか、予約特典として設定資料付きのサントラブックが付属されていた。

作中では強力な源素を司るマナが複数登場し、契約を結んで力を借りることになるが、なかでも闇のマナ・プルーアがいる聖地「月の塔」で流れるのがこの曲である。柔らかなアコースティックギターの調べと、真空を思わせる透明感のあるシンセ音による感傷的なイントロから始まり、14秒から透き通ったピアノの主旋律が加わることで、メランコリックな響きに磨きをかける。闇夜のように暗く退廃的だが、同時に至上の安らぎをもたらす曲調が、幻想的で神秘的な没入感を生み出す。傷心を癒し、優しく労わってくれるような一曲である。

闇は不安を掻き立てるけど、ときに安らぎを与えることもある、というのが肌で感じられるような曲ですね。