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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#532 『Cygnus』(阿知波大輔/ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~/PS4・NS)

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ガストがおくる錬金術RPG・アトリエより、

阿知波大輔作曲、ルルアの『Cygnus』。ヴィントシュトーネ戦で流れます。

アトリエシリーズのナンバリングA20として登場した本作。直近の不思議シリーズや黄昏シリーズからさらに遡って、メルル以来実に7年ぶりとなるアーランドシリーズの最新作である。本作の主人公・エルメルリア(通称ルルア)は、アーランド1作目の主人公だったロロナの娘であり、新たに懐かしのアーランドの地で古文書を巡る大冒険を繰り広げることになる。調合システムはトトリをベースとしたシンプルな選択式のものだが、覚醒やブーストといった新要素により、かなり何でもありな代物を自由につくり出せるようになった。美麗なグラフィックはますます正統進化し、シナリオも王道な出来栄えとなっているなど、満を持してのアーランド4作目にふさわしい手堅い仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは阿知波大輔氏、中河健氏、柳川和樹氏の三名。三名とも現在はフリーランスで活躍しているが、元々はガストに所属していた作曲家である。アトリエシリーズとも関わりが深く、阿知波氏は初代から、中河氏はヴィオラートから、柳川氏はトトリから作曲に携わっている。アーランドシリーズに関しては、1作目(ロロナ)は中河氏が単独で、2作目(トトリ)は中河氏と柳川氏が共同で、3作目(メルル)は阿知波氏と柳川氏が共同で作曲していたが、4作目の本作にして初めて全員集合する形となった。本作では従来のアーランドらしさを残しつつ、新世代の息吹を感じさせるような力強い楽曲が多く、過去作の曲のアレンジについては、時とともに成長したキャラクター、変化したフィールドにあわせて、その移り変わりを表現した編曲がなされている。サウンドトラックは3枚組で発売されている。

ヴィントシュトーネは、物語の序盤からその存在が語られる、シュテル高地の山頂に棲む巨大な怪鳥である。ルルアが錬金術士として成長するうえで欠かせない役割を担うこの強敵との激闘を彩るのが、阿知波氏お得意の濃密なギターサウンドである。ピアノとコーラスによる荘厳なイントロから始まり、伴奏も主旋律も奏でるエレキギターの熱い音色が加わると、その音色が幾重にも重なって重厚な和音を生み出す。美しくも激しいシンフォニックロックの響きが、いかにも終盤のボス戦らしい極上の熱狂を漂わせていて、親友を救うためになんとかしてみせる、という強い決意が滲んだこの一戦を極限まで盛り上げてくれる。

一戦目(負けイベント)の時点で曲の格好良さに痺れ、二戦目のリベンジでようやく長く聴けるというのが味噌ですね。ちなみに曲名の意味は「白鳥座」。ヴィントシュトーネは全然白鳥っぽく見えませんけどね。

※追記 後に阿知波さん自身が明かしたところによると、曲名はヴィントシュトーネを指しているのではなく頼もしく成長したルルアをイメージして命名したとのこと。