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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1467 『ラシェール・リンカーネイション』(川井憲次/アルノサージュ ~生まれいずる星へ祈る詩~/PS3)

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ガストがおくる7次元RPG・アルノサージュより、

川井憲次作曲、志方あきこ歌唱、『ラシェール・リンカーネイション』。

ラスボス戦で流れます。

画面越しの7次元の少女と交流を深めるコミュニケーションゲーム・シェルノサージュの続編にあたる本作。7次元先の異世界を舞台に、詩魔法と呼ばれる力を行使する謎の生命体・シャールをめぐり、人類の敵とみなして抗戦する青年・デルタと幼馴染の少女・キャスティ、そして人類との共存を信じる機械兵器・アーシェスと世界の理を知る少女・イオンが、それぞれの想いを胸に戦うことになる。前作はヒロインのイオンとのリアルタイムなコミュニケーションを軸としたアドベンチャーだったが、本作では勢力と視点の異なる二つのパーティを切り替えて進めるザッピング制のRPGにジャンルを変更している。本作の物語を架け橋としてアルトネリコシリーズに繋がる構成を取っているため、戦闘システムを中心にアルトネリコシリーズとの共通点がみられる。シリーズ恒例の目玉要素である詩魔法は健在で、戦闘中に発動できる必殺技として10曲以上の劇中歌が収録されている。そのほか、調合システムやヒロインとの触れ合いなども存在する。全体的に世界観が入り組んでいて、作品間の繋がりやプレイヤーとの結び付きを重視した特殊な構造であるゆえに、敷居が高くニッチな印象が強いが、その分だけ深遠な意欲作に仕上がっている。後に追加要素を加えたPLUS版がVita向けに登場したほか、リマスター版がPS4、スイッチ、PC向けに登場した。

本作の音楽を担当するのは阿知波大輔氏、霜月はるか氏、土屋暁氏、柳川和樹氏。ボーカル曲の作曲には上記四名に加え、dottedline hiroko氏、MANYO氏、Morrigan(土谷忠寛)氏、石塚徹氏、大嶋啓之氏、川井憲次氏、志方あきこ氏(作詞や歌唱もおこなっている)が携わっている。阿知波氏はかつて、柳川氏は当時、土屋氏は現在もガストに所属している作曲家で、なかでも土屋氏は本作のディレクターを務めている。ボーカル関連の作曲家は主にフリーランスで同人・商業問わず幅広く活躍していて、前作やアルトネリコシリーズでも参加経験のある者が多い。歌唱には志方氏と霜月氏をはじめ、ロシア人シンガーの故・Origa氏、キャスティ役の南條愛乃氏、さらには東京混声合唱団を起用している。本作ではシェルノサージュ譲りのノスタルジックな雰囲気にアルトネリコ譲りの民族系のサウンドを掛け合わせた表情豊かな楽曲が揃っていて、ボーカル曲は造語歌詞をフィーチャーした幻想的で壮大な作風を堪能することができる。サウンドトラックについては、インスト曲をまとめたオリジナル盤と、ヒロイン別にボーカル曲を収録したアルバムがそれぞれ発売されている。

ラスボス戦で流れるのがこの曲である。慈悲深く包み込むように響く志方氏のアカペラで始まり、その美しさたるやまるで聖歌のような印象を与える。15秒から東京混声合唱団によるバックコーラスとストリングスオーケストラが加わるとますますその印象が強まり、戦闘曲の枠に囚われない耽美的なアンサンブルを披露する。作中においてこの詩は戦いのためというより惑星を創造するためのものであり、そのスケールの大きさに見合うように歌声が幾重にも重なり合って集大成らしい崇高な盛り上がりをみせる。しばらく合唱を続けた後、53秒からワンフレーズだけ独唱すると、続く58秒で一気に流れが変わってオーケストラが勢いづく。力強く打ち鳴らされるドラムに、1分8秒以降で今度は造語ではなく日本語で歌うコーラスが合流することで、当初は聖歌のように思えた曲調は、さながら国家ならぬ星歌へと変貌を遂げる。1分55秒で一旦勢いを抑えると、鐘の音を交えながら甘美な間奏を紡いでじわじわと力を蓄えていく。ようやく2分半過ぎでその力を解放すると、今まで以上に崇高で盛大で壮麗な展開で魅せてくれる。詩と音の一つ一つに想いが凝縮された一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。あれこれ形容する言葉を考えて書きましたが、すごいの一言に尽きます。