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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1209 『つよくなれたかな?』(堀畑智裕/わるい王様とりっぱな勇者/NS・PS4)

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日本一ソフトウェアがおくる絵本を旅するRPG・わるい王様とりっぱな勇者より、

堀畑智裕作曲、『つよくなれたかな?』。戦闘リザルトで流れます。

嘘つき姫と盲目王子のスタッフによる新作として登場した本作。かつてドラゴンの魔王が勇者の青年に敗れ、改心したドラゴンと勇者が親友となった世界を舞台に、亡き父に代わって幼少よりドラゴンに育てられた勇者の娘・ゆうは、魔王の正体がドラゴンだと知らぬまま、偉大な父の冒険譚に憧れて魔王討伐の旅路に出ることになる。嘘つき姫でみられたおとぎ話風の作風を踏襲していて、フィールド画面も戦闘画面も各種UIもぜんぶひっくるめて、手描きの絵本のなかをそのまま操作できるようなビジュアル表現が徹底されている。純朴なゆうと、いつかゆうに倒されると知りつつ見守る王様ドラゴンの二人のどこか切ない関係性を軸に、メインストーリーはもちろん、道中のサブクエストも含めて心温まる物語を楽しむことができる。世界観表現の一環としてなのか、フィールドごとに十分にレベル上げをしないとダッシュ不可で、全体的にゆうの移動速度がゆっくりであるなど、主に探索面でスローテンポな部分がある。隅々まで優しくて味わい深い雰囲気が染みた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは古賀美香氏、堀畑智裕氏、松本タケシ氏、Svyatoslav Petrov氏。主題歌をはじめとするボーカル曲の作詞・作曲・歌唱は志方あきこ氏が手がけている。古賀氏(1曲のみ担当)は日本一ソフトウェアに、堀畑氏、松本氏、Petrov氏はデジタルコンテンツ制作会社ジーアングルに所属する作曲家である。このうち志方氏とジーアングルの三名は嘘つき姫での担当経験がある。本作ではメルヘンチックでノスタルジックな作風にあわせて、リコーダーやアコースティックギターなど、素朴な響きを帯びた楽器をふんだんに取り入れた良質な楽曲群が揃っている。また、曲によってはコーラスを印象的に用いることで幻想的な色味を添えている。サウンドトラックは初回限定盤に付属されている。

戦闘後のリザルトで流れるのがこの曲である。たたかいが終わって経験値やお金などを獲得する一連の流れを彩る勝利のファンファーレのようなもので、ほぼ一瞬で遷移することができるが、手を止めて聴き入らせてくれるキャッチーさに満ちている。お祝いムードのある華やかなイントロで始まり、アコーディオンの溌溂とした主旋律が、スタッカート(短く音を切って弾く奏法)の利いたピアノと絡み合うことで、思わず小躍りしたくなるような快い響きを生み出す。しばらくはタンゴ風の小気味良い曲調のまま曲が進行し、16秒からは笛も加わってますます陽気な印象が強まるが、23秒では束の間だけピアノの勢いが途絶えて重めの低音を響かせ、シリアスな雰囲気をも漂わせる。サビのラストフレーズとなる26秒で、笛が高音のレを奏でながら締め括ると、再びアコーディオンとピアノがリズミカルに協奏し出し、30秒ほどで1ループが完結する。ただ明るいだけではなく、勇者としての使命感が伝わってくるような一曲である。

素敵な曲ですね。他にもボス戦も好きです。この曲と楽器構成が近いのに加え、鳴らし方やメロディーの付け方が似ている感じがします。『強敵を追い払え』、あわせてどうぞ。

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