日本一ソフトウェアがおくるアクションアドベンチャー・嘘つき姫と盲目王子より、
松本タケシ作曲、『月夜に溶ける歌』。タイトル画面で流れます。
童話や絵本のような柔らかいタッチで描かれた本作。少女に変身する力を持つ狼の化け物が、過失で失明させてしまった人間の王子の視力を取り戻すべく、自らの正体を姫と偽りながら、願いを叶えてくれるという森の奥の魔女の館を目指すことになる。ステージクリア型の2Dスクロールアクションである。狼の姿と姫の姿を使い分けて、一方で障害物をその強靭な爪で引き裂き、他方でその柔らかい手で王子を導きながら、獣が蔓延る風変わりな森を攻略していく。グラフィック、シナリオともに、優しく幻想的な世界観をとことんまで追求した仕上がりとなっている。後にアプリ向けに移植された。
本作の音楽を担当するのは堀畑智裕氏、松本タケシ氏、山崎泰之氏、Svyatoslav Petrov 氏の四名。いずれもデジタルコンテンツ(音楽以外にもイラストや映像など様々)制作会社ジーアングルに所属する作曲家たちである。また、主題歌には志方あきこ氏を起用しているなど、音楽面には力を入れている。ダークでメルヘンチックな世界観にあわせて、本作の楽曲もそれに寄り添った儚げな作風のものが揃っている。サウンドトラックはタイアップの主題歌除き全曲収録されていて、曲ごとに誰が作曲を担当したかは明かされていないが、松本氏が作曲した一部の楽曲のみ、ジーアングルのサイト内で紹介されている。
タイトル画面で流れるのがこの曲である。ピアノの物憂げな旋律に、ビブラートやピチカートを利かせたストリングスが綺麗に映え、満月を背景に口ずさむ狼の孤独な後ろ姿を優しく包み込む。その温もりあふれる音使いは、待ち受ける悲痛な運命を予感させつつも、それでも前へ進もうとするいたいけな健気さを表現していて、月夜の闇にしっとりと、じんわりと溶け込むような可憐さにあふれている。ゲームを始めてすぐの第一印象を美しく彩ってくれる一曲である。
夜廻・深夜廻のテーマ曲然り、こういう悲愴感漂うピアノ曲はいいものですね。あっちはタイトル画面ではなくエンディングですが。