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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1192 『凍える水晶の海』(阿部公弘/虫姫さまふたり/AC)

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ケイブがおくるシューティング・虫姫さまより、

阿部公弘作曲、ふたりの『凍える水晶の海』。2面で流れます。

ファンタジックな世界観と激しい弾幕が特徴の虫姫さまの続編にあたる本作。甲獣と呼ばれる巨大生物が蔓延る世界を舞台に、前作で心を通わせた異国の王子の死と引き換えに森の神となった少女・レコは、兄の仇討ちのために遣わされた幼い王子・パルムと出会い、誘き出されるがままにやがて女王の許へ向かうことになる。全5面構成の縦スクロールシューティングで、前作主人公のレコに加えて、新キャラのパルムをプレイアブルとするダブル主人公制になった。自機選択時にノーマル(癖のない性能)とアブノーマル(テクニカルな性能)のいずれかのショットタイプを選べるため、実質的に4種類の自機が用意されている。難易度は遊びやすいオリジナルモード、手強いマニアックモード、極悪なウルトラモードに分かれていて、前作以上に間口を広げて、初心者から人間離れした実力者まで挑戦できるバランスに調整されている。前作譲りの独創的な世界観と弾幕に、ダブル主人公制ならではのキャラ同士の掛け合いや自機の性能差が加わり、遊びの幅が広がった仕上がりとなっている。後にXbox360スマホに移植されたほか、調整を施したブラックレーベル版が登場した。

本作の音楽を担当するのは阿部公弘氏と並木学氏。いずれも当時、音楽制作会社ベイシスケイプに所属していた作曲家である。このうち並木氏は前作に引き続きメインで作曲していて、シリーズ初参加の阿部氏の担当分は少数に留まる。前作でみられた鮮やかで幻想的なテクノ・トランス系のサウンドは本作でも健在で、なかには二胡や篠笛を連想させるようなオリエンタルな音色を含む楽曲が存在する。サウンドトラックについては、ボーナストラックとしてイメージソングやキャラボイス集なども含めて収録されている。

2面で流れるのがこの曲である。吹雪の海を進むステージで、天候は大荒れで前途多難に見えるが、曲のおかげでむしろ爽快な気分にさせてくれる。シンセリードの清涼感あふれる音色に、スレイベルの涼やかな鈴の音を織り交ぜることで、雪と水晶のイメージに沿った煌びやかな印象を与える。はじめはノリノリな浮遊感に満ちているが、28秒頃から低音のピアノを添えるなどして浮遊感を保ちつつ重厚感を出すことで、しっくりと耳に馴染むような濃密な響きを生む。特に1分8秒過ぎにはパッドやマレット系の独特な奥行きのある音色を存分に響かせ、いっそう透き通ったような快い聴き心地を感じさせる。その後もキラキラした曲調を貫き続け、聴いているだけで強い恍惚感をもたらしてくれる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。綺麗ですね。ステージ背景は寒々としていますが、曲はひんやり心地良い感じで好きです。