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#1191 『禁断の地』(Dennis Martin/レジェンド オブ ドラグーン/PS)

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SCEがおくるRPG・レジェンドオブドラグーンより、

Dennis Martin作曲、『禁断の地』。禁断の地で流れます。

SCE謹製のRPGとして登場した本作。かつて支配的な立場にあった有翼人に対し、人間たちがドラゴンの力を宿す竜騎士・ドラグーンを生み出すことで勝利を収めた歴史を持つエンディネス大陸を舞台に、故郷を黒き魔物に滅ぼされた青年・ダートは、絶滅したはずのドラゴンと出会い、ドラグーンとして覚醒したことをきっかけに、やがて世界の命運を賭けた戦いに身を投じることになる。ディスク4枚組から成る壮大なシナリオと、発売当時の最高峰と言える美麗な映像表現が特徴である。戦闘面ではボタンをタイミング良く押して技を繰り出すというアクション要素を含むシステムを採用しているほか、ドラグーンに変身して見た目も性能も派手な攻撃を放つことができる。ボス戦のみならず通常戦闘でも一戦一戦が長く戦略的な立ち回りを求められ、ゲームテンポは遅いが気は抜けないようなシビアなバランスに調整されている。重厚で幻想的なハイファンタジーと変身モノのエッセンスを組み合わせた独自の世界観と、歯応えのあるストイックなゲーム性が印象的な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはDennis Martin氏と故・見良津健雄氏。Martin氏はアメリカ出身の作曲家で、普段はテレビ方面の劇伴作曲やレコーディングエンジニアなどを手がけている。ゲーム音楽を担当するのは本作が初めてとのことである。見良津氏は音楽制作会社メロネストに所属していた作曲家で、SCE製の作品ではジャンピングフラッシュシリーズなどの担当経験がある。本作では見良津氏が戦闘曲まわりを中心に、Martin氏がそれ以外を作曲する形で役割分担している。楽曲の傾向としては主に民族調とテクノを使い分けて、平時は抑えめでピンポイントで盛り上げるような劇伴寄りの路線をとっている。サウンドトラックは主題歌も含めて収録されている。

禁断の地で流れるのがこの曲である。その昔、有翼人の首都であった王都カデッサの跡地で、今はただセピア色の廃墟が残るばかりである。都市が丸ごと遺跡になったような独特な景観にあわせて、曲もまた全編にわたってミステリアスな響きを帯びている。ハープに似た物憂げな主旋律と、それを包み込むように響くエフェクトの効いた伴奏、9秒や19秒などで挿入される奇妙な効果音のいずれもが、非常に謎めいた聴き心地を生む。ハープ風の主旋律の後ろで、ピアノを思しき音色が寄り添いながら奏でられることで、さらに奥行きを感じさせる印象を与える。とりわけ38秒以降、ループに至るまで小刻みにピアノが鳴り続けると、ますます心動かされるような繊細な没入感を漂わせる。音の一つ一つに神秘が宿る秀逸な一曲である。

元々は都市でも、転送装置による迷路染みた構造になっているので、ダンジョン曲扱いにします。ちなみにこの曲は、主題歌のイントロのピアノ部分によく似てますね。主題歌『If You Still Believe』、あわせてどうぞ。

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