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#1646 『堕天使のための哀歌』(並木学/デススマイルズII 魔界のメリークリスマス/AC)

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ケイブがおくる横スクロールシューティング・デススマイルズより、

並木学作曲、2の『堕天使のための哀歌』。最終面の後半で流れます。

ゴシック×美少女の作風が特徴的なデススマイルズの続編にあたる本作。前作のハロウィンの戦いから1か月あまり過ぎてクリスマス気分に包まれるなか、サタンクロウズの不意打ちで奪われた秘宝・願いの音符を取り戻すべく、ウィンディアたちエンジェルが飛び立つことになる。前作と比べてクリスマスに衣替えしてホラー風味が薄れた分、また違った華やかさや可愛らしさが強調されている。自機は2キャラ続投、2キャラ入替で前作と同数を誇り、年長メンバーが削られたが新たに兄妹(女装少年と幼女)が追加された。基本的な操作やゲーム性は概ね共通しているが、大きな違いとして挙げられるのがグラフィックの3D化で、横スクロールを軸としつつも縦の移動や3Dならではの立体的な演出が取り入れられている。アイテムカウンタが1000まで溜まるとショット強化や敵弾掻き消しなどのパワーアップ効果を発動でき、特定の敵を撃破した際に返ってくる反応弾を利用した稼ぎが楽しめる。稼働当初は未実装・未調整部分がみられたが、順次アップデートされていった。総じてやや粗いがポテンシャルのある仕上がりとなっている。後にXbox 360に様々な要素を追加して移植されたほか、前作とセットでPS4、スイッチ、Xbox One、Steamに移植された。

本作の音楽を担当するのは上倉紀行氏、工藤吉三氏、内藤那津子氏、並木学氏。内藤氏はケイブに所属する作曲家で、他三名は当時、音楽制作会社ベイシスケイプに所属していた作曲家である。このうち並木氏は前作から引き続きの参加で、前作では単独で手がけていて、本作でも大半の楽曲を担当しているメインコンポーザーである。内藤氏の担当分は主題歌やイメージソングの作詞作曲のみである。本作ではクワイアやオルガンなどのゴシック系の雰囲気を受け継ぎつつ、クリスマスらしさを意識した幻想的な色合いが強まっている。クラシックを編曲した楽曲も健在で、選曲やアレンジのかかり方が光る。サウンドトラックはアーケードのオリジナル盤のほか、360版のものをまとめた限定盤、多数の作曲家が書き下ろした予約特典のミュージックパックのアルバムなどが存在する。

最終面の後半で流れるのがこの曲である。壮麗な宮殿をぐるぐる回転しながら上昇する縦スクロール面で、笑い声や「おねえちゃん、あそぼ?」と何重にも響く雑魚敵の呼びかけが一種独特な不気味さと面妖さを醸している。前半の『魔法にかけられた宮殿』(上倉氏の作曲)のゴシックシンフォニックメタルから一転して、哀歌と題する通りのメランコリックな曲調がよく映える。冒頭はオルガンでたっぷりムードを整え、9秒からにわかに麗しい歌声やチェレスタが加わってますます深みへと誘う。40秒からみられる独特な歌唱と煌びやかなチャイム、ハープなどの組み合わせは俗世を超越した神聖性があり、まるで深みに陥りながら高みへ連れ去られるような、上下感覚を失う聴き心地を生み出す。聴いていると魂を抜かれそうになる一曲である。

前半の『魔法にかけられた宮殿』が大変格好良い曲で、続けて聴いたときの差が演出的に綺麗に嵌まっている感じがしますね。あわせてどうぞ。

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