ケイブがおくる縦スクロール弾幕シューティング・虫姫さまより、
並木学作曲、『鎮魂の空』。ウルトラモードのラスボス戦で流れます。
硬派なシューティングゲームで知られるケイブの作品群のうち、色鮮やかなファンタジー世界を舞台とする本作。神と崇められし巨大な昆虫・甲獣さまに会うべく、生贄の少女・レコ姫は森の奥へと進んでいくことになる。弾がすくなめのオリジナルモード、いつもの弾幕が楽しめるマニアックモードに加え、悶絶必至のウルトラモードの三種類の難易度が用意されていて、初心者から上級者まで幅広い層が挑戦できる仕組みになっている。躍動感あふれるカラフルなグラフィックと、幾何学的な美しさを誇る弾幕、癖の強いキャラクターのいずれもが人気を呼び、後にPS2やXbox360、Steamにも移植された。
本作の音楽を担当するのは岩田匡治氏と並木学氏。両名とも当時ベイシスケイプに所属していた作曲家で、現在はフリーランスで活躍しているが、元々は二人ともベイシスケイプの設立メンバーである。このうち並木氏は続編のふたりでもメインで作曲をおこなっている。鬱蒼と生い茂る自然豊かな世界観にあわせて、本作の楽曲は鮮やかで幻想的なファンタジーサウンドが揃っている。サウンドトラックはアレンジ含め複数発売されている。
数多の苦難を乗り越えて辿り着いたウルトラモードのラスボス戦で流れるのがこの曲である。ウルトラモード以外では拝むことすらできぬ真ラスボスとの壮絶な戦いを彩るこの曲は、一周回って激しさとは無縁の、讃美歌を思わせる穏やかな混声コーラスが特徴的である。もはや美しいとは到底言い難い、グロテスクなほどの弾幕量(紫色であるがゆえに、俗に葡萄弾や葡萄畑と言われる)に絶望せざるを得ないシチュエーションだが、あくまで優しく、心の傷に寄り添うような包容力たっぷりの甘美な歌声が、絶えず安らぎをもたらしてくれる。無慈悲なまでに慈悲深い、いかにも最期にふさわしい一曲である。
曲だけ聴くと癒しですが、そこに正気の沙汰とは思えない弾幕地獄が加わると、一気に抗いようのない恐怖、あるいは諦観のようなものが滲み出ますね。1面道中の『シンジュが森へ』(同じく並木さんの作曲)のフレーズが取り入れられているのも印象的です。『シンジュが森へ』、あわせてどうぞ。