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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1707 『Episode End』(三浦健/バイオハザード リベレーションズ/3DS)

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カプコンがおくるサバイバルホラーバイオハザードより、

三浦健作曲、リベレーションズの『Episode End』。

エピソード終了時のリザルト画面で流れます。

バイオハザードシリーズのうち、3DS向けながらも外伝ではない本流の作品として登場した本作。2005年、雪山での任務中に消息が途絶えた対バイオテロ組織・BSAAのエース隊員であるクリスらの足取りを追って、彼の戦友であるジルとパーカーが異形蔓延る豪華客船へと潜入することになる。原点回帰のコンセプトのもとでナンバリング4と5の間の物語を描いていて、エピソード仕立てで続きが気になる海外ドラマ風の脚本構成を取っている。アクションものとしての色合いが強まっていた直近のシリーズ作品に対し、本作では旧来のホラー路線を強調していて、狭い空間で何者かがにじり寄る音や気配、演出の妙が光る。操作に関しては主観・客観視点で選択可能で銃を構えながら移動したり拡張スライドパッドに対応した細やかな挙動を取ったりすることができる。特筆すべきは映像美と音声への注力ぶりで、携帯機でも非常にリアルで陰影や質感に富んだグラフィックに加え、英語音声・日本語字幕だけでなく6言語の吹替を搭載している点も印象深い。メインモードのほかに通信協力プレイできるレイドモードが収録されていて、ハクスラ形式でガンガン戦えて本編とは違ったカタルシスが得られる。総じて引き込まれる濃密さがある仕上がりとなっている。後にWiiUPS3Xbox 360、 PCにHD移植されたほか、あらためてDLC全部入りでスイッチ、PS4Xbox One版が登場した。

本作の音楽を担当するのは講本一朗氏、鈴木幸太氏、三浦健氏。鈴木氏はカプコンに所属する作曲家で、講本氏は本作の開発元であるトーセの作曲家である。三浦氏は当時、自身が代表を務める音楽制作会社サウンドグラフィティースタジオに所属していた。いずれもシリーズへの参加経験があり、三浦氏はコードベロニカから、講本氏は0から(ただし0では作曲ではなくサウンドディレクターとして)、鈴木氏は5から携わっている。本作のクラシカルなホラーテイストに合わせてサウンドもじりじりと恐怖や焦燥を誘う雰囲気のものが多い。なかにはストリングスやピアノ、コーラスが映える耽美的な曲調や、勇ましく盛り上がるオーケストラサウンドなどもある。サウンドトラックは2枚組で短いジングルも含めて収録されている。

エピソード終了時のリザルト画面で流れるのがこの曲である。命中率、死亡回数、クリアタイムとともにアルファベットでランクが記される。各エピソードの最後は先の展開が気になる引きがあり、続くリザルト画面は簡潔だからこそ余波が残るような印象を与える。この曲にはそうした感覚をいっそう補強する効果がある。ざわざわ響くストリングス、暗澹と奏でられるピアノ、張り詰めたシンセの組み合わせで、曲全体を形作るムードやテンションには一貫性があるのに、どうしてもなにかが引っかかるような不可解な淀みを生み出している。22秒からは流麗なピアノフレーズが待ち受け、その澄んだ響きには洗練された美しさはあるが、心洗われるとは言いがたい不穏さが宿っている。一段落ついたはずなのにさらなる波紋が広がっていく様子を如実に表現した一曲である。

どう言い表しましょうね、こう……澄んでいるのに淀んでいて、謎めいた綻びがある感じがすごく素敵だと思います。