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#1577 『Blue of the End』(下村陽子/The 3rd Birthday/PSP)

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スクエニがおくるシネマティック・アクションRPGThe 3rd Birthdayより、

下村陽子作曲、『Blue of the End』。ラスボス戦で流れます。

ホラー小説を原作とするパラサイト・イヴシリーズの実質的な3作目として、原作への明示的な言及を避けつつ新たな物語を描いた本作。前作から13年後、異形の存在・ツイステッドが出現して再び混沌に包まれたニューヨークを舞台に、記憶を失ったアヤ・ブレアは他者の意識を乗っ取って過去を変えるオーバーダイブ技術の適合者となって、未知の脅威と己自身に向き合うことになる。前々作は広義のRPG、前作はアドベンチャーときて、本作はアクションRPGであり、サバイバルホラーに通ずる雰囲気のあった前2作と比べてストラテジー要素を含むガンアクションに方向転換している。危険な戦場をオーバーダイブで次々と他者に乗り移って進める戦術的な駆け引きがあり、うまく配置や順番を考えて兵士を動かすことで疑似的に包囲したり共闘したりして場全体を操作する感覚を味わえる。ムービーをはじめとするグラフィック全般は美しく表現されていて、物語は一見すると途切れ途切れで追いづらいものの、作中のデータベースを通じて補完していく形式を取っている。総じてこれまでと毛色が異なるが戦闘システムを中心に意欲的な要素を盛り込んだ仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは下村陽子氏、鈴木光人氏、関戸剛氏。鈴木氏と関戸氏はスクエニに所属する作曲家で、下村氏はかつてスクウェアに在籍していたフリーランスの作曲家である。下村氏はスクウェア在籍時に前々作の作曲を担当し、前作は不参加だが本作でカムバックを果たしている。本作ではシリーズのなかでもホラー要素が薄いため、音楽は不穏なものもあるが流麗でアップテンポなものが多い。特に戦闘曲を軸にピアノやストリングス、シンセを組み合わせたクールなサウンドが揃っている。また、過去作からのアレンジ曲を要所要所で用いて盛り上げている。サウンドトラックは主題歌を除き3枚組で収録されている。

ラスボス戦で流れるのがこの曲である。オルガンによる壮麗なイントロで始まり、さながらレクイエムのように重く昏いムードを充満させるが、16秒でにわかに勢いづく。いかにもクライマックスらしい狂おしさを帯びながらピアノやエレキギター、コーラスが間断なく鳴り続ける。そのリズムパターンは初代のラスボス戦『U.B.』を彷彿とさせるところがあり、粘り強く繰り返すことで決意と昂揚感を誘う。40秒頃で引き千切れそうなほどに悲痛なストリングスの高音が響くさまは非常に象徴的で、52秒で入れ替わるようにエレキギターが掻き鳴らされるとますますテンションが増していく。1分4秒ではさらに力を込めて渾身の盛り上がりをみせ、ドラマチックであると同時にひどくやるせない雰囲気を漂わせる。果てしなく悲劇的な一曲である。

内なる苦しみのようなものが滲んでいる感じがしますね。『U.B.』もあわせてどうぞ。

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