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#1237 『そしてそこへ辿りつく者』(下村陽子/聖剣伝説 HEROES of MANA/NDS)

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スクエニがおくるストラテジーRPG聖剣伝説HOMより、

下村陽子作曲、『そしてそこへ辿りつく者』。ラスボス戦の第一形態で流れます。

聖剣伝説シリーズのうち、CHILDREN of MANAに続くDS向けのスピンオフとして、ブラウニーブラウンが開発を手がけた本作。ペダン王国の兵士である青年・ロジェは、獣人の国・ビーストキングダムへ偵察任務に赴いた折にペダンの謀略を目の当たりにし、仲間とともに反旗を翻して母国と戦うことになる。シリーズおなじみのアクションRPGではなく、全27章構成のチャプタークリア型のリアルタイムストラテジーである。勝敗条件に則って戦闘を進めるうえで、ユニットの指揮、資源の収集、資源を用いた施設の建造やモンスターの召喚といった要素を刻一刻と変わる戦況のなかで管理する必要がある。ゲームの流れやジャンルそのものへの慣れを要することに加え、タッチペンによる曖昧な操作感度や、味方AIの統率の難しさなどから、良くも悪くも異質な遊び応えを持つ。システム自体はストラテジーゲームの醍醐味を押さえつつ適度に簡略化されているため、戦略的であると同時に、国産かつ携帯機向けらしい手軽さを味わえる。総じて意欲的な試みが窺える仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは下村陽子氏。かつてスクウェアに在籍していたことがあるフリーランスの作曲家で、聖剣伝説シリーズにおいてはLEGEND OF MANAの担当経験がある。本作ではシリーズ特有の絵本らしい質感を概ね踏襲している一方で、裏切りや反乱のようなテーマを扱っているため、戦闘曲を中心にシリアスでドラマチックな楽曲が取り揃えられている。それに合わせてか、曲名も全体的に物語性を感じさせるような凝ったネーミングのものが多い。サウンドトラックは2枚組で収録されている。

ラスボス戦の第一形態で流れるのがこの曲である。手始めにピアノと木琴によるメロディアスなイントロによって、聴いた瞬間にこの一戦が最後の正念場なのだと直感せしめる印象を与える。その印象をさらに強固にするのが、16秒以降で加わるバイオリンの咽び泣くような音色である。本作のメインテーマである『古の勇者達へ ーOpening Theme from HEROES of MANAー』のフレーズを象徴的に引用することで、クライマックスに向けて身も心も引き締まらせてくれる。48秒から激しく太鼓を打ち鳴らしたり、56秒からコーラスを交えて神秘的な盛り上がりをみせたり、1分半頃からオルガン→コーラス→バイオリンの順で代わる代わる旋律を奏でたりするなど、終始聴き応えのあるメリハリに富んでいる。主役の楽器群もさることながら、何より曲調を支えているのが冒頭から深く低く唸り続けているベースで、1分25~28秒や1分45~55秒などでは特に顕著に存在感を示している。あまりの美しさと重苦しさに気圧されてしまいそうな一曲である。

ラスボス戦はこの曲を皮切りに、以降の形態で流れる曲も怒涛の勢いがあって印象深いです。話に挙がった『古の勇者達へ ーOpening Theme from HEROES of MANAー』、あわせてどうぞ。

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