VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1236 『Opening ~ Space High』(富沢敏明/ヴィマナ/AC)

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東亜プランがおくるシューティング・ヴィマナより、

富沢敏明作曲、『Opening ~ Space High』。1周目の1面で流れます。

東亜プラン製のアーケードシューティングのうち、テクモが発売元を務める作品の第3弾にあたる本作。悪の狂気と破滅の影に蝕まれた星を舞台に、神殿に眠る聖なる戦闘機・ヴィマナを駆って最後の審判を下すことになる。全6面×無限周回型の縦スクロールシューティングで、作品名であり自機の名称でもあるヴィマナとはヒンドゥー教に伝わる空飛ぶ乗り物を指すことから、インドの宗教や神話に通ずる要素が盛り込まれている。操作体系は8方向レバーとボタン2つ(ショットとサークルボム)から成り、ショットボタンを長押しすることで溜め撃ちできる点が特徴である。サークルボムは発動時に敵弾を全消去するうえに、自機の周囲を回転するように8弾の球体を展開するという強力な代物で、これらの球体は自機の防衛のみならず、敵を捕捉すると自発的に攻撃を仕掛ける。そのため、名目上はボムだが攻防一体のオプションを彷彿させる性能を持つ。舞台設定やシステムなど一見して独特な雰囲気を放っているが、難易度は緩めで操作は簡潔、内容的には質素な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは富沢敏明氏。当時、東亜プランに所属していた作曲家である。本作はインドモチーフの世界観ではあるが、音楽面ではそのイメージに縛られることなく、東亜シューティングらしいパワフルでノリノリなサウンドが揃っている。音源の魅力やメロディーの牽引力に加え、パーカッションの緻密さが印象的である。サウンドトラックについては、同時期に稼働していたテキパキとあわせて収録されたものや、後年になってデジタル録音でヴイ・ファイブとともに収録されたものなどが存在する。

1周目の1面で流れるのがこの曲である。ゲーム開始直後、自機が宇宙空間へと飛び立つ出撃シーケンスが10秒ほどあるが、その間、チキチキと絶え間なく鳴らされるハイハットと、シリアスでヒロイックな響きを帯びたメロディーラインによって、いかにもシューティングらしいテンションと使命感を印象付ける。本格的に操作可能となる時点でイントロが明けてメインフレーズに突入し、主旋律もベースもドラムパートも一丸となってますます勢いづく。15~18秒などにおける高音の響き方が鮮やかで快い点や、25秒頃からのメインメロディーとカウンターメロディーの交錯具合が絶妙である点、さらには38秒以降の独特な反復を交えたフレーズが小気味良い点など、曲のどの部分を取っても聴かせどころに事欠かない。とりわけ50秒からのラストスパートは聴いていると気が逸るようなノリに満ちていて、そのままほとんど切れ目を意識させることなく1分2秒でループに入る。心が突き動かされるような一曲である。

抗いがたい格好良さですね。2周目以降は出撃シーケンスが省かれ、基本は同じだけどイントロが調整されたバージョンが流れますが、音源が見つからないので紹介は割愛します。