VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1370 『Exhaled Haven』(Exemia/Gunvein/PC)

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NGDEVがおくる弾幕シューティング・Gunveinより、

Exemia作曲、『Exhaled Haven』。3面と5面のボス戦で流れます。

ドイツのレトロ志向なゲームスタジオ・NGDEVによる現行環境向けの新作として登場した本作。2Dのアーケードライクな弾幕系縦スクロールシューティングで、開始時に自機と難易度を選んで全5面を攻略していく。自機(主人公)は平均的な性能のRiko、遅めだが広射程のMiko、トリッキーな立ち回りのLizzyの三人の少女で、可愛らしいキャラ絵が用意されているが、特にストーリーや背景設定が語られることはない。攻撃手段はショット、ロックオンレーザー、ボムの3種類で、とりわけ広範囲の敵を一掃しつつ無敵時間を得られるボムを軸に据えている。敵が落とすボムの欠片を集めてストックを増やせるほか、欠片を消費してショットを一時的に強化することができる。ボムを使ってボムを補充してボムを使っての繰り返しでスコアをガンガン稼ぐ、という爽快なサイクルが本作の特徴兼魅力である。ケイブ製シューティングにインスパイアされたと公言する通り、システム、雰囲気、弾幕の圧など大部分がよく似ている。通常のゲームモードのほか、敵配置が自動生成されるRoguelike Arrangeモード、チュートリアルや練習等のモードも搭載されている。日本語未対応だが、見た目に忠実なプレイ体験を得られる仕上がりとなっている。後にスイッチに移植された。

本作の音楽を担当するのはExemia(本名はFabián Morelos Aldana)氏。メキシコ出身の作曲家で、インダストリアル、サイケ、ガバなどを組み合わせたハイブリッドなエレクトロニックサウンドを得意とする。レトロゲーム機のサウンドフォントを取り入れたチップチューン系の作風でも知られるが、実際にゲームの作曲を一から担当するのは本作が初めてのようである(一部のリミックス担当としてなら、本作以前にもBLUE REVOLVERなどに携わった経験がある)。本作は随所にケイブの影響がみられるが、音楽に関しては毛色がやや異なり、サイケデリックトランスやシンセウェイブを中心とした前のめりな楽曲群が揃っている。サウンドトラックは各種デジタルストアで配信されている。

3面と5面のボス戦で流れるのがこの曲である。強敵を前に逸る心音を表現したかのごとく、ハイペースでパンチの効いたキックが響くことで、瞬時に戦闘態勢に移行して迎え撃つ心構えを整えさせてくれる。10秒頃に何か怪しげな音色が後ろで鳴り出し、それに呼応して12秒からさらに勢いが激化すると、以降ときどき不穏な機械音を交えながら曲が展開していく。曲の根底を貫くリズム感や全体的な曲調はほぼずっと一定だが、35秒から徐々に上昇していく音程らしきものが加わったり、58秒から目まぐるしく荒ぶるメロディーを奏でたり、サビ手前の1分41~42秒で急ブレーキを挟んでから後続の流れを盛り上げたりして、中弛みすることのない一触即発の緊迫感を漂わせ続ける。特にサビ後半、2分4~5秒でまたブレーキかけてから急発進すると、単純な速さで言えばそれまでと変わらないが、圧力、迫力、推進力、そのどれもに凄まじく磨きがかかっている。曲終盤、4分33秒頃に追加のメロディーが加わるなど、最後まで疲れ知らずの勢いを保つ。窒息しそうなほどの昂揚感に満ちた一曲である。

曲名は直訳だと、吐き出された安息の地……? なんとなく語感に格好良さがありますが、弾幕に晒されるのは安息なのでしょうか。