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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1371 『財宝を求めて』(武内基朗/ランドストーカー ~皇帝の財宝~/MD)

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セガがおくるアクションRPGランドストーカーより、

武内基朗作曲、『財宝を求めて』。前半のフィールドで流れます。

初期のシャイニングシリーズの開発で知られるクライマックス製・セガ販売の作品として登場した本作。かつて贅を尽くしたノール王が遺した財宝が眠る伝説の島・メルカトルを舞台に、トレジャーハンターの男・ライルは、財宝の在処を知るサッキュバス族の少女・フライデーとともに冒険することになる。当時としては画期的だった、高さや奥行きの概念を持つ疑似3Dグラフィックが特徴のクォータービュー型のアクションRPGである。持ち上げ可能な箱や壺を担いで足場をつくったり、立体構造の影に潜む隠しギミックを発見・活用したりして、三次元空間ならではの探索し甲斐のあるパズル要素に挑むことができる。アクション要素としては、剣での攻撃やジャンプなどの基本動作に加え、足場の飛び移りや動く罠への対処といった緻密さや瞬発力を試される場面も存在するため、適度に緊迫感のある冒険を楽しめる。常時斜め視点で操作は斜め入力を前提としていることから操作に若干の慣れを要するほか、概念上は3Dでも見た目はフラットに近いことから空間把握にも慣れを要する。総じて遊び応え十分な仕上がりとなっている。後にメガドライブミニに収録された。

本作の音楽を担当するのは武内基朗氏。90年代当時にゲーム音楽界隈で活動していた作曲家で、本作より後になるがシャイニングフォース外伝以降のシリーズの作曲を担当したことなどで知られる。本作はエルフやサッキュバス、遺跡、財宝などが登場するファンタジー色強めの冒険活劇で、そうした雰囲気に沿うようにエネルギッシュでキャッチーな楽曲が揃っている。コミカルな作風に見合った元気の良いものから、ワルツやバラード系の気品漂うもの、不穏な響きを帯びたものまで、表情豊かなサウンドを楽しむことができる。サウンドトラックについては、複数の楽曲をメドレー化して軽いリミックスを施したアレンジ盤は存在するが、原曲を個別に収録したものは未発売である。

前半のフィールドで流れるのがこの曲である。手始めに行進曲のようなリズムを刻む打楽器と、妙な明るさと不穏さを併せ持つ高音が象徴的に響き渡り、期待と不安が入り混じった独特な昂揚感を漂わせる。4秒頃からラッパの主旋律が入ると、その音色は仰々しく感じられるほど力強くも哀愁漂う印象をもたらす。主旋律の存在感と迫力が非常に強いなかで、8~12秒など裏に配置されたメロディーもうまく曲の流れを支えていて、クラシック然としたリッチな響きを生み出している。36秒頃から一時的に仰々しさは鳴りを潜めるが、ほんの一時的であり、また徐々に盛り上げていくことで、44秒頃には早くも派手さを取り戻す。58秒~1分1秒にはサックス風の音色で、1分6~9秒にはフルート風の音色で綺麗な演奏を披露し、様々な音を駆使して冒険のムードを高めてくれる。悲喜交々の旅路を彩るにふさわしい雄大な一曲である。

偉大な冒険家気分に浸れる前半のフィールド曲が好みですが、後半の曲も、なんだか無敵BGMみたいな疾走感があって好きです。『トレジャーハンター・ライル』もあわせてどうぞ。

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