VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1024 『CASTLE』(川口博史/ヴァーミリオン/MD)

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セガがおくるアクションRPGヴァーミリオンより、

川口博史作曲、『CASTLE』。城で流れます。

アーケード用の体感ゲームで知られるセガのAM2研が開発したメガドライブ初期のRPGである本作。世界征服を企むアーネスト国が台頭するなか、辺境の村で育った主人公の青年は、死に際に父親から亡国の王子であると告げられ、アーネスト国に対抗すべく世界中の王家に伝わる指輪を集める冒険に出ることになる。フィールドやダンジョン探索は3D視点、街は見下ろし型の2D視点で描かれ、戦闘面では8方向へ移動できる通常戦闘と、横スクロールで固定されるボス戦とでシステムやアクション性が異なる。シナリオそのものは王道なファンタジー風だが、住民の会話やイベントにユーモアが仕込まれている点が特徴である。エンカウント率やマップの視認性など大味な部分もあるが、独特な存在感のある意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは川口博史氏と高木保浩氏。スタッフロールではそれぞれHIRO、YASと表記されている。いずれもセガに所属する作曲家である。このうち川口氏がメインの作曲を、高木氏は作曲に加えて効果音制作を手がけている。本作では剣と魔法のオーソドックスなファンタジー世界にあわせた重厚なサウンドを中心に、明朗な曲から暗く激しい曲まで個性的な音が一通り揃っている。サウンドトラックについては、発売から20年後になってレンタヒーローと抱き合わせで収録されたものが登場した。

各地の城で流れるのがこの曲である。指輪集めのために様々な国の城に立ち寄るなかで、ある国ではモンスターが王に化けていたり、別の国では王が変装の名人で城にいなかったりする。そうしたイベントが展開する城内を、優雅だが不思議と剽軽な響きを帯びた音色で彩る。チェンバロの上品な音色を交えながら快い三拍子のリズムを奏でることで、気高くも冒険心をくすぐるような瑞々しさを感じさせる。とりわけ20秒過ぎに奏でられるメリハリ豊かなサビがエレガントな印象を強める。1ループ40秒ほどのなかに本作ならではの城の雰囲気を凝縮した一曲である。

城としての風格を備えつつ、全体的にカラッとしたような音使いが素敵ですね。