たかしげ宙と皆川亮二著のSF漫画「スプリガン」を原作とする、
フロムがおくる3Dアクションバトル・ルナヴァースより、
神田有士・齋藤司・瀬川圭一郎作曲、『PRANOIAC REVOLUTION』。
ラスボス戦で流れます。
古代遺物をめぐる特殊工作員たちの活躍を描くSF漫画「スプリガン」のゲーム化作品にあたる本作。遺物の守護と封印を担う巨大財閥・アーカムの日本支部に所属する高校生の大槻達樹は、スプリガンと呼ばれるS級エージェントを目指して最終試験に挑むなか、月に関する謎に触れて人類存亡を賭けた戦いに巻き込まれることになる。世界観や一部の登場人物は原作を踏襲しているが、原作完結後を舞台としていることから主人公や物語はゲームオリジナルである。ミッションクリア型の3Dアクションで、銃やナイフ、パワードスーツを駆使しながら14+隠し2面の全16ミッションを攻略していく。スーツは攻撃特化、防御特化、スピード特化の3種類あり、スーツのレベルが上がると性能が強化されたり攻撃方法が変化したりする。操作には慣れを要するきらいがあり、基本的に方向キーで上が前進/左右が旋回に固定されたラジコン操作形式で、視点調整は一応できるがロックオン機能はなく、敵やステージ設計がシビアな割に小回りが利きにくい。その分、ミッション失敗時にギブアップしても道中で得た経験値や資源は持ち帰れるし、失敗し続けることで救済装備が得られるなどの配慮がみられる。総じてすこし癖のある魅力的な世界観に浸れる仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは齋藤司氏、瀬川圭一郎氏、星野康太氏。左記三名がスタッフロールのサウンドスタッフ欄に列挙されていて、さらにアシスタントスタッフとして神田有士氏の名前が確認できる。いずれも当時フロムに所属していたか現在も所属している作曲家である。サウンドトラックによると星野氏がサウンドプロデューサーとして統括していて、他三名がコンポーザーを担っているようである。本作の音楽は曰く「激しさと神秘性」をコンセプトに、スペースロックやシンフォニックテクノ、アンビエント、ときにはハープやコーラスなども交えた没入感あふれるサウンドが揃っている。サウンドトラックにはシークレットトラックも含めて収録されていて、一部音源に調整が施されている。
ラスボス戦で流れるのがこの曲である。月面にて連戦を経た後に挑む最終決戦で、青く輝く地球を背景に天使の如き姿をしたガーディアンと衝突することになる。上記動画はサントラ音源であり、作中では細かな響きの差異に加えて、曲全体が半音高く、ドラムが本格始動するまでのイントロが半分ほどの尺であるなどの違いがある。じんわり鳴り渡るノイズとシンセとギターリフと、何より特徴的なアコーディオンの音色が印象深く、聴いていると高次元にトリップしてしまいそうなサイケデリックな響きを帯びている。まるでファンタジー世界の華やかな市場にいるかのような錯覚を起こさせるが、58秒から断続的に聴こえ始めるコーラスには只ならぬ物々しさを孕んでいる。1分19秒以降はしがらみから解き放たれて木琴とアコーディオンが奔放なアンサンブルを披露し、やがて収束すると今度はエンジン音を彷彿させるリフとともにチェロが豊かな低音を奏で出す。曲後半の2分16秒からは、それまでアコーディオンが担っていたパートをストリングスが担い、一味違った清々しさが感じられるようになる。愉快で奇妙で勁烈な一曲である。
滲み出るフロムっぽい曲調ですね。記事を書くときは原則的にゲームで実際に使われた原曲音源で紹介する方針ですが、これは紹介したかったので特例です。