フロムがおくる忍者アクション・天誅より、
高山義和作曲、千乱の『Snipe on edge』。ラスボス戦で流れます。
ステルス系の忍者アクション・天誅シリーズのうち、Xbox 360向けに登場した外伝作にあたる本作。郷田家東忍流の忍びである主人公とその相棒は、命を受けて危険な任務をこなすうち、やがて裏で糸を引く隣国・緒河原との抗争に巻き込まれていく。シリーズ初となるキャラクリエイト機能を搭載していて、性別・容貌・衣装・身体能力などを設定してオリジナル主人公を作り上げることができる。シリーズおなじみ、気付かれていない相手を一撃で仕留める忍殺システムに関しては、障子越し、壁や天井張り付き状態からの急襲、組み付きからの羽交い絞めなど、様々な新アクションが実装された。ステルス要素については音と臭いの概念が追加され、物音を立てたときや、肥溜めや血にまみれたときなどにも敵が気配を察知するようになった。また、Xbox Liveを介したマルチプレイに対応していて、任務を選んで対戦・協力したり、ロビーとなる忍の里で交流したりすることができた(現在はオンラインサービスは終了済み)。ステルスにしてはゲームバランスが緩めで敵の行動パターンが読みやすいため、スリルは控えめだが、カジュアルに遊べる仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは衛藤英幸氏、末永浩一氏、高山義和氏、南亜矢子氏。末永氏と南氏は当時、衛藤氏と高山氏は現在もフロムに所属する作曲家である。天誅シリーズでおなじみの朝倉紀行氏は本作では不参加で、末永氏は紅から、衛藤氏は忍大全から関わっているが、高山氏と南氏はシリーズ初参戦のようである。このうち高山氏と末永氏が本作の大部分を作曲していて、両名それぞれオープニングとエンディングの主題歌の作曲も手がけている。和を軸として三味線や尺八、笙などを散りばめつつ、ジャンルはアンビエント、ロック、トライバルなど多岐にわたり、ステージ攻略中は発覚する前と後でインタラクティブに音楽が変わる手法を取っている。全体的に空間を演出するような方向性で静かなものが多い。サウンドトラックには主題歌やインスト版などのボーナストラックも含めて収録されている。
ラスボス戦で流れるのがこの曲である。以前にも戦ったことのある因縁の相手で、前回の戦いで流れる『霞』(衛藤氏の作曲)はアングラ感のある和風インダストリアルテクノ的な曲調で終始一定のペースを保っていたが、こちらは最終決戦らしいメリハリの利いた曲調に仕上がっている。冒頭からしばらくは琵琶や神楽鈴などを象徴的に鳴らしてじわじわと決戦の機運を高め、20秒あたりで一瞬静まり返った後に掛け声が入ると、それを合図に流れが一変する。掻き鳴らされる琵琶、休みなく脈打つ和太鼓、そしてさながらシギの囀りを彷彿させる龍笛が急速な勢いで絡み合うことで、極限までテンションを引き上げてくれる。36秒からは笛の出番が減るが、その分、リズミカルなベースラインや歌声が聴こえ出し、1分過ぎには和楽器と並んでストリングスの低音が渋く響き渡るようになる。1分41秒からのフレーズは予測不能で技巧的な響きがあり、決戦は決戦でも正々堂々の一騎打ちにこだわらない狡猾さが感じられる。2分20秒頃から収束していくと瞬く間に振り出しに戻る。影に巣食う者同士の戦いぶりを見事に表現した一曲である。
『霞』のリズム感も良い感じに滾りますね。あわせてどうぞ。