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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1114 『Young and Clumsy』(MASA・高橋洋明・中村新一郎/ワンピース 海賊無双/PS3)

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尾田栄一郎著の人気漫画「ONE PIECE」を原作とする、

バンダイナムココーエーテクモがおくるアクション・海賊無双より、

MASA高橋洋明・中村新一郎作曲、『Young and Clumsy』(『若く無様』とも)。

エピソード15「頂上決戦」で流れます。

ONE PIECEのゲーム化作品のうち、一騎当千のゲーム性で知られる無双とのコラボ作品の1作目として登場した本作。道化のバギーとの戦いからマリンフォード頂上決戦までのストーリーを追体験できるメインログモード、好きなキャラで自由に敵を薙ぎ倒せるアナザーログモード、与えられた目標をこなすチャレンジモード、協力プレイできるオンラインモードの4種類の遊びが搭載されている。プレイアブルキャラはルフィたち麦わらの一味を中心とする13人で、数が限られている分、個々のキャラモデルやアクションは非常に活き活きと表現されている。従来の無双作品とは異なる本作独自の特徴として、ステージ攻略の一環としてゴムゴムの実を活かしてギミックを解くアドベンチャー要素や、タイミングよくボタンを押すクイックタイムイベントが含まれているほか、幕間の会話シーンはコマ割りを駆使した漫画らしい演出が用意されている。ストーリーは端折り気味でシステム面もやや大味だが、個性豊かなONE PIECEのキャラで無双する爽快感を味わえる意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのはMASA氏、高橋洋明氏、中村新一郎氏。退社済みのMASA氏を除き、いずれもコーエーテクモに所属する作曲家である。無双シリーズの作曲経験に関しては、MASA氏は真・三國無双の初代から携わっている無双サウンドの立役者で、中村氏は戦国無双シリーズやガンダム無双シリーズを手がけたことがあるが、高橋氏は三名中唯一の元テクモ出身者ということもあり初参戦である。三名とも以降の海賊無双シリーズでも作曲している(中村氏のみ2は不参加)。本作ではエレキギターを用いた無双らしさ全開のハードロック調を軸に、トランペットやサクソフォンなどの管楽器を取り入れた派手で痛快なサウンドが揃っている。また、作中にサウンドテストが存在する。サウンドトラックは限定盤に一部楽曲を収録したものが付属されていた。なお、本作では曲名はすべて英語表記で統一されているが、次作以降は日本語表記に変更された。

メインログのエピソード15「頂上決戦」で流れるのがこの曲である。原作屈指の山場であるマリンフォード頂上戦争を再現したステージで、義理の兄・エースを救いたい一心でルフィが力尽きるまで奮戦することになる。冒頭からぐっと盛り上げる豪快なシンバルで始まり、すぐさま唸るように響くエレキギターとブラスの重低音が加わることで、非常に好戦的な印象を与え、剥き出しの闘志を感じさせる。18秒頃で主旋律が入ると、激しくも独特な哀愁を滲ませる泣きメロによって、壮絶な戦場を彩るにふさわしい力強い悲壮感を生む。50秒あたりで一旦ブラスが鳴り止むと、しばらくはエレキギターの独壇場となるが、1分5秒で再度メインフレーズに回帰し、これまで以上に血気盛んな勢いをみせる。サビ直前の1分36秒ではシンバル以外の楽器の音をぜんぶ止めることで、その堰き止めた分のエネルギーを発散するかのように、後続のメロディーをいっそう強く開放感たっぷりに盛り上げる。出し惜しみすることのない悲痛な昂揚感に満ちた一曲である。

この曲を紹介してほしいと言うリクエストをいただきました。曲構成、間の取り方、楽器の鳴らし方、どれをとっても盛り上げ方が凄まじくうまいですね。曲名が劇中の台詞というのも粋です。