VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1242 『因縁果』(いとうけいすけ/忍道 戒/PS2)

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アクワイアがおくる忍者アクション・忍道より、

いとうけいすけ作曲、『因縁果』。ラスボス戦の後半で流れます。

天誅侍道の開発元として知られるアクワイア製の作品であり、忍道シリーズの第1弾にあたる本作。室町後期の小国・宇高多を舞台に、長きにわたり国の平穏を保ってきた忍びの名門・飛鳥忍者が一夜で壊滅したのをきっかけに隣国の大名が侵攻を始めるなか、宇高多に流れ着いた記憶喪失の黒衣の忍者・鴉のゴウは争乱の渦に身を投じることになる。忍者モノらしい自由度の高いステルスアクションと、時代劇らしいリアリティとケレン味を両立させた画作りが特徴である。黙々と任務をこなすもよし、人目をはばからず大立ち回りを演じるもよし、逆に人目を避けて闇に潜むもよし、任務をよそに収集要素に励むもよし、あるいはミッションエディター巧と呼ばれるエディット機能で任務を自作するもよし、プレイヤーの気の向くままに様々な遊び方を楽しめる。特筆すべきはハラキリエンジンというシステムで、プレイヤーの取った行動に応じて信頼度や勢力バランス、ストーリー展開が変わるなど、因果応報の概念がゲーム上で色濃く再現されている。全体的にカメラワークは荒く、バグは付き物だが、気骨のある意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのはいとうけいすけ氏と坂本英樹氏。いずれも音楽制作会社ノイジークロークに所属する作曲家である。坂本氏がサウンドプロデュースを、いとう氏がOPを除く全BGMの作曲をおこなっている。また、エンディングの主題歌にはロックバンドのHIGH and MIGHTY COLORを起用している。本作では独特な静謐さと不穏さを纏ったオリエンタルでアンビエントサウンドが揃っている。和風の世界観なので尺八などの和楽器を用いている一方で、オーケストラ楽器やギター、中華の二胡やインドのタブラ(太鼓)なども取り入れている。サウンドトラックは主題歌を除いて収録されている。

ラスボス戦の後半で流れるのがこの曲である。飛鳥の業を断ち切らんとする戦いを彩るにあたって、冒頭1秒間だけ低く唸るような効果音を鳴らしたのち、すぐさま分厚いオーケストラヒットを轟かせて勢いづく。ざわめくストリングス、乱れ打つ太鼓、甲高く響く神楽鈴などを組み合わせてテンションを加速させていき、15秒にて二胡の主旋律が加わる。二胡の表現力の豊かさはさることながら、22~24秒や30~32秒などでピアノのグリッサンドを印象的に用いることで、流麗でドラマチックな雰囲気を目一杯漂わせる。すでに十分昂っているところで、サビとなる50秒から尺八が珠のように美しい旋律を紡ぎ、いかにも決戦らしい極上の臨場感をもたらす。サビが終わるとしばし打楽器のみの間奏が挿入され、非常にリズミカルで躍動的な間とキレを生み出す。そこから再び二胡やピアノ、シタールを彷彿させる音色を加えて力強く盛り上がっていき、2分7秒にはアラビアンに通ずるエキゾチックな響きをみせる。終盤にかけても見せ場に事欠かず、とりわけ2分43秒からの二胡は、伴奏のインパクトに負けず劣らずダイナミックな演奏を披露する。複雑に絡み合い捩れ合って形成された因果の終着点を表現するにふさわしい迫真の一曲である。

すごい曲ですね。何か宿っているような、鬼か神か何か畏れ多いものが潜んでそうです。