VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1241 『戦争』(菅野よう子/信長の野望・全国版/FC)

www.youtube.com

光栄がおくる歴史シミュレーション・信長の野望より、

菅野よう子作曲、ファミコン移植の全国版の『戦争』。合戦で流れます。

上記動画の2:29から3:43まで。

戦国大名となって天下統一を目指す信長の野望シリーズの2作目のファミコン移植版であり、これまでPCゲームメーカーだった光栄にとっての家庭用機初参入作品にあたる本作。開始時に中部17ヶ国か全国50ヶ国のいずれかを選択し、好きな大名を選んで乱世を統べることになる。いずれのモードも1560年春スタートで、基本的なゲーム性は移植元であるPC88版と共通している。ファミコン版の特徴として、ハードの制約上、タイトルロゴなどを除きほぼすべてがひらがな表記である点や、戦場がHEXからスクエアに変わった点などが挙げられる。加えて何より目を引くのはソフト本体(カセット)の大きさで、その大きさに見合うように内政や暗殺、合戦、さらには本能寺の変の再現イベントに至るまで、様々な要素が詰め込まれている。後のシリーズと比べると簡素なつくりで、特に弱小大名は自分で選んだ場合もCPUに回った場合も非常にやられやすいなど、ゲームバランスのむらが激しいが、ファミコンでも天下統一する面白味を味わえる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは菅野よう子氏。三國志や後の大航海時代シリーズなどでも作曲経験のある、80~90年代の光栄製の作品ではおなじみの作曲家である。信長の野望シリーズには本作から6作目の天翔記まで携わっている。本作では移植元の原作同様、曲数は限られているが、荘厳な響きのあるPC88版のFM音源に対し、迫力を保ちつつもファミコン音源にうまく置き換えている。サウンドトラックについては、アレンジ音源で三國志とあわせて収録したサウンドウェア盤、PC88版原曲を同時期の歴史三部作と一緒に収録したもの、後発のスーファミ版の音源を太閤立志伝とともに収録したものなどが存在するが、FC音源のものは未発売である。曲名に関しては、サウンドウェア盤だとアレンジ向けの題名が充てられているほか、PC88版では一部メドレー形式になっている。スーファミ版の収録曲は作中の使用場面に即した題名が付されている。ここではスーファミ版の曲名に倣うものとする。

合戦で流れるのがこの曲である。前述の通り戦場はスクエア(正方形)で区切られていて、最大5部隊を配置・出撃させて戦うターン制を採用している。移動や攻撃はもちろん、敵に寝返りを促したり降参したりすることもできる。手に汗握る駆け引きを表現するにあたって、原曲よりもややテンポが上がって短3度ほど音程が下がった主旋律によって躍動感たっぷりに彩る。原曲は雅楽に通じるような厳かな響きがあるが、FC音源だと音色の性質上、丸みを帯びていて弾むような勢いがある。鮮やかな高音を響かせるメロディーの下で、8分音符で等間隔に並べられた音色が淡々と鳴り渡ることで、パーカッション不在のなかでも歯切れの良いリズム感を生み出す。1ループ17秒ほどの短さでじわりと昂っていく感覚を得られる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。サウンドウェア盤の曲名は『天下攻防』で、アレンジの域を超えてオーケストラ向けに再構築した新曲という感じです。ちなみについでに言うと、個人的にサウンドウェアの『比叡山燃ゆ』が大好きです。PC88版原曲、『天下攻防』、そしてせっかくなので『比叡山燃ゆ』もあわせてどうぞ。

www.youtube.com

www.youtube.com

www.youtube.com