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#1038 『信長・戦争』(山本光男/信長の野望・戦国群雄伝/PC98)

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光栄がおくる歴史シミュレーション・信長の野望より、

山本光男作曲、PC98版の戦国群雄伝の『信長・戦争』。信長の戦闘シーンで流れます。

上記動画の9:57から12:50まで。

信長の野望シリーズの3作目のうち、PC98用の移植にあたる本作。戦国大名を一人選び、配下武将を率いて東北や九州を除く全38か国の統一を目指すことになる。先行して三國志にあった配下武将の概念が本作でも導入され、それぞれ能力値が振り分けられた約400人の武将を随えて攻略していく。シナリオは1560年開始の「群雄割拠」と1582年開始の「信長の野望」の2種類あり、前者は従来通り地道に領土を拡大していくが、後者ははじめから織田が圧倒的に優勢なバランスとなっている。戦闘面では野戦に朝・昼・夜の概念が加わり、特に夜は視界が狭まるが夜襲を仕掛けられるようになったほか、新要素として城内で戦う籠城戦が追加された。大名が没しても後継者を任命すれば継続してプレイできる点や、各武将にコマンド実行に必要な行動力が備えられている点などが特徴で、とりわけ行動力(とそれに関わる政治力)が足りないとそもそも行動できないため、非常に重要な役割を占めている。後のシリーズに継承される要素を数多く盛り込んだ意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは菅野よう子氏と山本光男氏。菅野氏は信長の野望シリーズや三國志シリーズなど光栄製のシミュレーションではおなじみの作曲家で、山本氏は本作以前にも維新の嵐での作曲経験がある作曲家である。前作では大名を問わず共通だったメイン画面や戦闘シーンの楽曲について、本作では信長のみ専用曲が用意されている。各機種ごとに音源に差はあるが、PC98版に関しては原作(PC88版)と同様、FM音源による重厚な楽曲群が揃っている。サウンドトラックについては、原曲を収録したBGM集のほか、アレンジされたサウンドウェア盤、一部楽曲に歌を載せたボーカル盤など、複数存在する。

信長の戦闘シーンで流れるのがこの曲である。ここでいう戦闘シーンは、敵味方問わず信長が出陣する戦争のことを指す。イントロから主旋律とベースのバランスが絶妙で、抑圧的だが覇気を感じさせる音色が、合戦にふさわしい引き締まった感覚を生む。すこし急いているようにも聴こえるリズム感が、じわじわと敵を追い詰める戦いぶりを彷彿させる。20秒頃(10:16)や25秒頃(10:21)で音階を下って捻りの効いた印象を与えると、その後間もなくイントロと同じフレーズを奏でてループに入る。恐ろしくも勇ましい悲壮感を漂わせる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。第六天魔王の戦というイメージにぴったりですね。音源違いはいろいろありますし、続編の武将風雲録でもアレンジ収録されています。個人的には風雲録のサウンドウェア盤の生演奏アレンジ(編曲は菅野さん)がとても上品で好きです。『天魔鬼神 下の巻』、あわせてどうぞ。

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