VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#980 『幹部会議フェイズ』(河西良/機動戦士ガンダム ギレンの野望 特別編 蒼き星の覇者/WSC)

www.youtube.com

機動戦士ガンダム」を原作とする、

バンダイがおくるシミュレーション・ギレンの野望より、

河西良作曲、蒼き星の覇者の『幹部会議フェイズ』(仮称)。幹部会議で流れます。

上記動画の20:20から22:24まで。

機動戦士ガンダム」の一年戦争を軸としたウォーシミュレーションシリーズ・ギレンの野望のうち、ワンダースワンカラー用のスピンオフにあたる本作。ギレンではなくガルマ・ザビもしくはマ・クベの視点で、ジオン公国地球方面軍を率いて地球を制圧することになる。基本的なゲーム性はシリーズを踏襲しつつ、携帯機向けに細かなシステムを取り除いていて、侵攻先や人事などは自由に決められない代わりに、幹部会議なる新要素が追加されている。自分含め5人の軍団長が議題について意見を戦わせ、主張・論破・鼓舞・批判・説得といった発言コマンドを使いこなしながら、必要に応じてあらかじめ買収などもおこなって望み通りの議案を採択させることが肝となる。そのほか、シリーズおなじみの要素として正史に従わないオリジナルのif展開も完備されている。独自性を出しつつコンパクトにまとまった仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは河西良氏。当時、音楽制作会社ツーファイブに所属していた作曲家である。ギレンの野望シリーズには初参加だが、ガンダムのゲーム化作品全般に目を向ければ、本作以前にも同じく携帯機向けでSDガンダムGジェネレーションギャザービートなどでの作曲経験がある。本作では劇場版の主題歌『哀 戦士』をはじめ、アニメ版原作の劇伴など馴染みの楽曲が幅広くアレンジして収録されている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

幹部会議の際に流れるのがこの曲である。意見が対立して順風満帆とはいかない論戦を彩るにあたって、曲冒頭から淀んだ雰囲気を漂わせ、ドラムパートに特徴的なキック音を据えることで重苦しさのなかに適度な緊張感を醸す。どこか不吉な響きを帯びた波形メモリ音源の低音が、相手の出方を窺って攻め口を試行錯誤する心理戦にふさわしい厚みを生み出している。会議という性質上、戦う手段は言葉の応酬であり直接的には戦闘行為を伴わないものの、実地での戦闘とは異なる形で戦の臨場感を表現した一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。今後に関わる重大な意思決定をしているという感覚が曲からひしひしと伝わってきますね。