VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1464 『ステージBGM18』(浅井真・河西良・小西輝男/機動戦士ガンダムSEED DESTINY GENERATION of C.E./PS2)

www.youtube.com

機動戦士ガンダム」を原作とする、

バンダイがおくるシミュレーションRPGSEED DESTINY GENERATION of C.E.より、

浅井真・河西良・小西輝男作曲、『ステージBGM18』。

C.E.71-Astray5「ビクトリア基地奪還作戦」の自軍ターンで流れます。

機動戦士ガンダムのゲーム化作品のうち、SEEDシリーズの舞台であるC.E.(コズミック・イラ)の世界に焦点を当てたシミュレーションRPGとして登場した本作。SEED全編と、当時放送中だったSEED DESTINYの途中までとそれに続くオリジナルストーリー、さらに外伝のSEED ASTRAYおよびX ASTRAYの一部が、SEED MSVからの参戦機体を交えて一挙に収録されている。ミッションを選んでマス目状のマップでユニットを指揮して進めるスタンダードなシステムと、機体やキャラを強化するカスタマイズ要素を軸としたオーソドックスなゲーム性を採用している。特筆すべきは機体がリアル頭身で細かく動く点で、セルルックで見応えのある戦闘アクションを楽しむことができる。ゲージを溜めて放つ必殺技のバーストアタックや、戦闘デモ中にたまに発動するボタン入力QTEの成否によって強力な補正を得られるSEEDセンスなど、勝負の行方を左右する派手な逆転要素が搭載されている。全体的にボイス入りの箇所がすくなめで、放送途中だったためにシナリオに不完全さがあるが、代わりに原作とは異なる独自のIFエンディングがみられる点が興味深い。総じて原作を追体験しながら作品間のクロスオーバーとIF展開を味わえる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは浅井真氏、河西良氏、小西輝男氏。浅井氏と河西氏は当時、小西氏は現在も音楽制作会社ツーファイブに所属している作曲家である。本作は開発元がSDガンダムGジェネレーションシリーズと同じトムクリエイトであり、ゲームシステム上でも類似点が多いが、作曲陣も同様にGジェネシリーズでおなじみの顔ぶれである。楽曲の一部は前年に発売されたGジェネSEEDからの流用である。もちろん本作オリジナルの曲も収録されていて、張り詰めた雰囲気のある重厚なサウンドが取り揃えられている。サウンドトラックは未発売だが、作中にサウンドテストが存在し、事務的なネーミングながら曲名が明かされている。

C.E.71-Astray5「ビクトリア基地奪還作戦」の自軍ターンで流れるのがこの曲である。地球連合軍とザフトが衝突する第三次ビクトリア攻防戦を舞台としたステージで、オーブ連合首長国のロンド・ギナ・サハクが登場する。そうしたなか、出だしから透き通ったコーラスと鮮やかなギターを華麗に組み合わせて、一波乱ありそうな絶妙なテンションを醸し出す。13秒頃から主旋律が入ると、期待通り波乱に満ちた展開を披露し、切なくも軽やかで舞い踊るような印象を与える。その音色は民族系のフィドルを彷彿とさせるが、30秒や33秒などで高音を奏でると笛にも似た清涼感を纏っていて、非常によく耳に残る。40秒以降で一旦主旋律が抜けると、幻想的なコーラスをバックに流麗なハープが掻き鳴らされるようになり、うまく緩急をつけつつ相変わらず耳に残る迫力を保ち続ける。50秒で再び主役が戻ってくるが、直後の54秒からは今までの速弾きを中心としたメロディーではなく、音色を長く伸ばして悲劇的な色合いの強い演奏を紡ぐようになる。58秒~1分や1分5~7秒など、フレーズの合間に隙あらば速弾きを挟むことで、勢いを殺すことなく見事な哀愁を生み出している。情熱的だが荒寥感が色濃く滲む一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。ロンド・ギナ・サハクのテーマとして流れる『サハク家:選ばれし者』共々、存在感のある曲ですね。『サハク家:選ばれし者』もあわせてどうぞ。

www.youtube.com