ガストがおくる近未来フライトレース・フレースヴェルグより、
小林美代子・土屋暁作曲、インターナショナルエディションの『primitive nature.』。
コンフォレストヴィオラのSTANDARDとEXPERTで流れます。
アトリエシリーズなどで知られるガストの初期のレースゲーム・フレースヴェルグの改良版にあたる本作。飛行技術が円熟した近未来を舞台に、戦闘機でレースを繰り広げるフォーミュラ・ハイパワードに挑戦し、チャンピオンを目指すことになる。空のレースゲームならではの、高低差や風圧の概念を取り入れたゲーム性が特徴で、コース上に敷かれたパワーバンド（エネルギー供給帯）に沿って飛行することで機体速度が上昇、離れれば離れるほど減速する。戦闘機らしくヨーやロールといった機体操作や、敵機をミサイルで攻撃・妨害する要素もあり、センスのある世界観と相まって独特な緊張感を醸す仕上がりとなっている。インターナショナルエディションでは新コースや二人プレイの対戦モードが追加された。
本作の音楽を担当するのは小林美代子氏と土屋暁氏。いずれも当時ガストに所属していた作曲家である（土屋氏は現在も吸収合併後のコーエーテクモのガストブランドに在籍している）。このうち土屋氏は作曲以外に企画やコースデザインなども広範に手がけていることから、大半の楽曲は小林氏（効果音や一部ボイスも兼任）の担当分となっている。フライトレースというコンセプトに合致したスタイリッシュなシンセナンバーが勢揃いしていて、ハウスやテクノ、なかにはアヴァンギャルドなガバ系のサウンドも含まれる。インターナショナル版ではコースの増加に伴って新曲が加わったほか、楽曲を自由に鑑賞できるミュージックルームも追加された。サウンドトラックは存在するが、インターナショナル版の追加曲は未収録である。
インターナショナル版の新コース「Comforest VIOLA」のうち、難易度がSTANDARDとEXPERTのときに流れるのがこの曲である。未開のジャングルをコースに改造したステージで、森はもちろん、滝や鍾乳洞といった大自然が待ち受ける。そうした自然豊かな風景を、さざめく環境音と野生的なドラムが鮮やかに彩り、原始的な空気感を漂わせる。イントロ明けの13秒から主旋律が入ると、幾度となくフレーズを繰り返し、そのたびに昂揚感が増していく。50秒からは美しく開放的な音色が響き渡ることで、透き通るような清涼感とともにうっとり聴き惚れるような恍惚感を醸す。2分5秒でおなじみのフレーズに回帰すると、続く2分18秒で転調していっそう深遠な没入感を生み、やがて元のキーに戻ってループに入る。原生的な自然のなかを戦闘機で駆ける爽快感を力強く印象付ける一曲である。
現行機でのリメイクが見てみたい作品です。MASTERだとこの曲のフレーズを借りた『deep forest (natureMix)』が流れて、そちらもまた魔術的な魅力のある素敵な曲に仕上がっています。あわせてどうぞ。
