アイディアファクトリーとレッドエンタテインメントがおくるリーディングRPG・
アガレスト戦記より、金子憲次作曲、『Faster Chase』。ボス戦で流れます。
コンパイルハート発のファンタジーRPGとして登場した本作。五つの大陸が存在する世界・アガレストを舞台に、没落貴族で軍人の青年・レオンハルトは、瀕死の重傷を負うも夢のなかで出会った謎の女性・ディシャナと契約を結んだことで、数世代にわたって世界を支える柱となり、大陸の命運を変えることになる。親子五世代による冒険譚が特徴で、主人公ごとに別の大陸を旅して、最終的にはヒロインを選んで次世代に託す（組み合わせ・好感度次第で子の容姿や能力が変わる）という、恋愛ゲーム的な側面を強く押し出している。戦闘はマス目状でユニットを動かして移動と攻撃をおこなうシミュレーションRPG風のシステムを採用している。やや単調だがボリューム満点な仕上がりとなっていて、後に追加要素を加えてXbox360とスマホ向けに移植された。
本作の音楽を担当するのは金子憲次氏。アイディアファクトリーに所属する作曲家で、アガレスト戦記シリーズはすべて単独で作曲している。エルフや獣人（いわゆるケモミミ）なども登場するハイファンタジー調の世界観にあわせて、本作ではオーケストラ仕立ての壮大なサウンドが揃っていて、各世代にテーマ曲があてがわれているなど、全体的に戦闘曲よりもイベント曲が充実している傾向にある。サウンドトラックはボーナストラックを含むが、主題歌は除いて収録されている。
汎用のボス戦で流れるのがこの曲である。イントロから飛ばしまくる、オルガンとエレキギターの高密度な轟音が印象的なゴシック系のロックナンバーで、13秒から主旋律のストリングスが入ると、その悲壮な音色が、激しい伴奏に引けを取らぬ存在感を示す。サビではさらにクワイアが加わることで神秘的な色合いを付け足し、濃厚な疾走感を生み出す。1分12秒～36秒までのギターの独壇場を終えると、以降の主旋律はストリングスに代わりギターが務めるようになり、重圧的でありながらも哀愁漂うメロディーを紡ぐ。ループ直前、2分ちょうどあたりで、エレキとクワイアの伴奏を随えながらアコースティックギターの音色が響くパートがあり、束の間だけ重苦しさから解放されるが、すぐにまた元の激しさへと回帰する。ボス戦ならではの重々しい昂揚感を見事に表現した一曲である。
本作にはいくつか同じように「～Chase」というネーミングの戦闘曲があって、どれも重厚な曲調だという点で共通していますが、唯一この曲は重さと速さが両立していて印象深いです。完全に余談ですが、個人的に11eyesの戦闘曲を連想します（以下は坂本昌一郎さん作曲『見よ、我が剣は未だ折れぬ！』）。
