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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1486 『ファイヤードラゴン』(塩生康範・中島享生・森田朋子/フロンティアストーリーズ/GBA)

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ネバーランドカンパニーがおくるアクションRPG・フロンティアストーリーズより、

塩生康範・中島享生・森田朋子作曲、『ファイヤードラゴン』。

ファイヤードラゴン戦で流れます。

エストポリスシリーズで知られるネバーランドカンパニー製のGBA向けアクションRPGとして登場した本作。14人の開拓者たちを乗せた列車が突如発生したゲートに飲み込まれ、謎の生物・CIMAが跋扈する異世界へと飛ばされたことを受け、新米ガーディアンのアークとアイヴィがみんなを守るべく戦うことになる。クォータービューで描かれる異世界ファンタジーの世界観のもと、年齢も性別も特技も異なる開拓者を率いて、安全なルートを確保して誘導しながらダンジョンを攻略していく。開拓者のなかには敵を攻撃できる者もいるが、基本的には無防備な非戦闘要員であり、主人公との信頼度や敵への恐怖度に応じて行動が変化する。開拓者を守るうえで、敵からの襲撃はもちろん、ダンジョン内のトラップにも気を配りながら、誰をどこに向かわせるかを考えて進める必要があるため、一種のタクティカル要素が含まれる。その一方で、ボス戦は主人公のみで挑む分、アクションに特化していて、攻撃パターンを見極めて戦うシビアなバランスに調整されている。物語の流れやダンジョンの構造などは繰り返しが多く、見方によってはやや単調で消化不良なきらいがあるが、守ることに重きを置いた独自のコンセプトとシステムが印象的な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは塩生康範氏、中島享生氏、森田朋子氏。いずれも当時ネバーランドカンパニーに所属していた作曲家である。三名が共同で作曲を担当した作品にはゲームボーイカラーエストポリス伝記 よみがえる伝説があり、本作でも同作に通ずるスピーディーでスリリングなサウンドが揃っている。戦闘曲を中心に、音を通じて手強さやプレッシャーが伝わってくるようなものが多く、オーケストラヒットやティンパニの効いた重圧感漂う楽曲を楽しむことができる。サウンドトラックは初回特典として同梱されていて、原曲音源の他に一部楽曲のアレンジや声優による掌編ドラマが収録されている。

ファイヤードラゴン戦で流れるのがこの曲である。序盤を過ぎたあたりの溶岩のダンジョンで待ち受けるボスであり、三つ首で火の玉や火炎放射を間断なく放ってくる。只ならぬ緊迫感に満ちたクワイア風のイントロで始まり、8秒過ぎにワイルドに疾駆するエレキギターが加わると、一気にパワフルなロックナンバーへと変わる。その旋律には荒れ狂うような熱さと勢いがあり、GBAならではのざらついた音源と非常に相性が良い。曲前半はギターの独壇場だが、後半の36秒からはオーケストラパートが設けられていて、ただアグレッシブな曲調というだけには留まらない悲壮感を醸している。ループする際はそのまま出だしから繰り返すことで、クワイアを挟んでテンションを整えて再びギターが入るまでの流れをうまく支えている。熱い曲調で厚みのあるドラマ性を感じさせる一曲である。

この粗っぽい音色がすごく格好良いですね。ちなみに本作は海外先行発売なので、カテゴリー上の曲の登場年は海外準拠にしてます。