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#1339 『嘆きの塔』(石橋明子・塩生康範・中島享生・森田朋子/エストポリス伝記 よみがえる伝説/GBC)

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ネバーランドカンパニーがおくるRPGエストポリス伝記より、

石橋明子・塩生康範・中島享生・森田朋子作曲、よみがえる伝説の『嘆きの塔』。

なげきの塔で流れます。

神々と英雄の戦役を描くエストポリスシリーズのうち、3作目にして初の携帯機向けの作品にあたる本作。二度に及ぶ虚空島戦役から100年後を舞台に、英雄の子孫であり冒険を夢見る主人公は、啓示を受けて村を訪れた占い師の女性・シーナとの出会いをきっかけに、やがて壮大な戦いに巻き込まれることになる。世界観や時系列は従来のシリーズを継承しつつ、非ナンバリング作品で携帯機向けということもあって、作風はライトでコミカルな色合いが強まっている。全12人のキャラを最大9人まで戦闘に参加させられる点が特徴で、3×3の陣形に配置したキャラのうち、1ターンにつき縦列の3人が行動を取る。ウェーブマトリックスシステムという仕組みを採用していて、キャラの位置によって行動順やダメージ補正、使える特殊攻撃が変わってくる。ダンジョンについては、前作で局所的に存在した、入るたびに構造が変わるランダム生成方式が、本作ではすべてのダンジョンに適用されるようになった。携帯機の特性に合わせてつくりを調整するなかで独自のバランスと戦略性を打ち出した意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは石橋明子氏、塩生康範氏、中島享生氏、森田朋子氏。いずれも当時ネバーランドカンパニーに所属していた作曲家である。このうち塩生氏は前作・前々作の作曲にも携わっていたシリーズサウンドの立役者である。前作まではスーファミだったが、本作はゲームボーイ音源のため、単純な表現力の制約でいえば本作の音楽は控えめになった。とはいえ、メロディーの馴染みやすさ、勢い、物悲しさや勇ましさなど、シリーズの音楽的魅力を汲んで適切にGB向けに順応させた上質な楽曲が取り揃えられている。サウンドトラックについては、本作までのシリーズ3作品を網羅したアルバムが発売されている。

なげきの塔で流れるのがこの曲である。四狂神が一柱、恐怖を司るディオスが待ち構える塔である。ゲーム後半から終盤にかけて物語の都合上、複数回挑むことになる。イントロから伸びやかに、憂いを帯びつつも力強く奏でられる旋律が印象的である。低音を中心にして展開する伴奏は簡素かつ規則的で、ドラムパートも同様に行進曲のような調子で整然と鳴り響く。あえてメインメロディー以外の起伏を抑えることで、メインメロディーの持つ魅力を最大限に引き立てているように感じられる。17秒からは主旋律と並行して、交互にミとレの音色を、徐々に強まったり弱まったり、また強まったりを繰り返しながら鳴らし続けると、独特な聴き心地の良さを醸す。が、34秒から打って変わって派手な音色が目立つようになり、一時的に勇壮さを増す。フレーズ終わりの50過ぎになると、再び交互にミとレを反復するパートが合流して心地良い余韻を生み、ループ直前の58秒~1分には粋な締め括り方で収束する。嘆き、恐怖、万波を乗り越えて仲間たちとともに進みゆくシチュエーションにぴったりな一曲である。

『死の塔』も好きです。『黄昏の塔』も。せっかくなので『幻惑の塔』も加えて、ぜんぶ聴きましょう。順番は死→幻惑→(嘆きは上をご参照ください)→黄昏です。

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