VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1338 『Little Inferno Titles』(Kyle Gabler/Little Inferno/WiiU)

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Tomorrow Corporationがおくる火遊び・リトルインフェルノより、

Kyle Gabler作曲、『Little Inferno Titles』。タイトル画面で流れます。

グーの惑星の開発者による新スタジオ・Tomorrow Corporationのデビュー作である本作。プレイヤーは暖炉であらゆるモノを燃やすことになる。燃やすという一点に絞ったコンセプトが特徴で、手当たり次第にモノを燃やし、その様子を眺めるのが主なゲームの流れである。燃やすとコインが手に入り、コインを消費してカタログで新たなモノを注文し、またそれを燃やす、を繰り返すなかで、誰かから手紙が届いて(当然これも燃やせるが)徐々に世界観や物語が浮かんでくる仕組みを取っている。加えて、手元にコンボ名のみが記載されたコンボリストがあり、名前を手がかりに特定の組み合わせでモノを燃やすとコンボを発見できるやり込み要素が含まれる。モノの種類も燃え方も様々で、炎のゆらぎ、煙や灰の質感、ときには不衛生な様子などが精巧に描かれるのみならず、ソーダ缶を燃やせば弾け飛ぶ、目覚まし時計はけたたましく鳴る、ロボットは叫ぶなど、コミカルでシニカルな燃え様を楽しめる。終盤にかけて一捻り火遊びの域を超えた要素も待ち受ける。火を見つめたい欲求を満たしてくれる仕上がりとなっている。後にPC、スマホ、Switchに移植された。

本作の音楽を担当するのはKyle Gabler氏。Tomorrow Corporationの創立者の一人で、本作では作曲に加えてプロデューサーやデザイナーを兼任している。本作の楽曲を制作するにあたって、80年代・90年代あたりの映画音楽を連想させるような、すこし古めかしさのあるメロディアスなオーケストラサウンドを目指したとのことである。作風全体が皮肉の効いた、妙に明るいようで翳が垣間見える方向性のため、曲もそれに倣ってアンビバレントなトーンを帯びている。また、作中CMとして英語ボイス入りのレトロでチャーミングなCMソングも用意されている。サウンドトラックについては、公式サイトにて一部ライナーノーツ付きで無償配布されている。

タイトル画面で流れるのがこの曲である。小さな業火を意味する作品名とは裏腹に、イントロから天に昇るような壮大な音色が響く点が象徴的である。立派に鳴り渡る鐘の音、シネマチックなムードを醸すストリングス、高らかに舞うクワイアを組み合わせることで、何か偉大な物語の幕開けを予感させるような印象を形作る。特に40秒以降は、曲調に目立った変化があるわけではないにしても、いっそう豪華で雄大な響きを帯びるようになる。小さな火種から大きな炎へと発展するも、やがていつかは鎮まる工程が、曲の流れのなかで表現されている。1分10秒で勢いが収束すると、数秒ほどパチパチと燃えさしが爆ぜる音が聞こえて終わりを迎える。聴いているだけで清められる感覚が押し寄せてくる一曲である。

80・90年代の映画ではありませんが、火繋がりで個人的にトリュフォー監督の華氏451の劇伴が好きなのを思い出しました。それはそれとして、英語ですが公式サイトのサントラページもよろしければどうぞ。

tomorrowcorporation.com