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#1056 『Mauve』(弘田佳孝/シャドウハーツ フロム・ザ・ニュー・ワールド/PS2)

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ノーチラスがおくるRPGシャドウハーツより、

弘田佳孝作曲、フロムザニューワールドの『Mauve』。南米での通常戦闘で流れます。

第一次世界大戦前後の世界各地を描くダークファンタジーRPGシャドウハーツシリーズの3作目にあたる本作。1929年のアメリカを舞台に、数年前の事故で家族と記憶の一部をなくし、今は私立探偵を営む少年・ジョニーは、仕事の依頼がきっかけで異能に目覚め、自らの記憶と世界の謎に向き合うことになる。前作・前々作の世界観やノリ、ジャッジメントリングなどの基礎的な部分を継承しつつ、キャラやシナリオは概ね一新されている。戦闘ではストックゲージを消費することで、同一キャラが一度に二回行動するダブル、行動順を問わず別キャラと即座に連携するコンボ、ダブルとコンボを組み合わせたダブルコンボなど、ユニークな動きが取れるようになり、全体的な難易度の向上も相まって戦略性が増した。前作と比べてシステム面の進化が感じられる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは井元ともこ氏、井元啓富氏、弘田佳孝氏、福田亮氏。コーラスでIkuko(野口郁子)氏と志方あきこ氏が参加している。メインコンポーザーの弘田氏は初代から携わっているシリーズおなじみの作曲家で、福田氏は少数の作曲に留まるが前作を除きシリーズに参加している。井元両氏は当時ノーチラスに所属していた作曲家で、このうちともこ氏は旧姓の小林友子名義で前作に関わっていた。本作では南北アメリカ大陸を舞台とした物語を彩るにあたって、渇きというコンセプトで楽曲を制作したらしく、ディジュリドゥ(オーストラリア先住民の管楽器)やカホンなどの民族楽器に電子音楽的なアプローチを加えたハイブリッドなフォークミュージックが揃っている。サウンドトラックは主題歌含め2枚組で収録されている。

中盤以降に訪れることになる南米での通常戦闘で流れるのがこの曲である。北米の通常戦闘曲『Dead Fingers Talk』(同じく弘田氏の作曲)の激しく野性的なインダストリアルロック調と比較して、この曲も同様に野性的な疾走感はあるが、激しさより切迫感を重視した曲調に仕上がっている。冒頭から打楽器が勢いあふれるビートを刻み、シンセストリングスや低音のベース、怪しげな効果音を交えながら調子を整えていくと、27秒あたりで柔らかめな音色が入り、緊張感漂うリズムに独特な安らぎをもたらす。1分手前でようやく主旋律の笛が加わると、その荒ぶる高音がカオスな清涼感を生む。心地良くもざわつくような不穏さのある一曲である。

説明のなかでちょこっと触れた北米戦闘曲『Dead Fingers Talk』、あわせてどうぞ。

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