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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1068 『星神・守護者たち』(伊藤賢治/サガ スカーレット グレイス/PSV)

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スクエニがおくるRPG・サガより、

伊藤賢治作曲・亀岡夏海編曲、スカーレットグレイスの『星神・守護者たち』。

神獣や神の僕など星神関連の敵との戦いで流れます。

サガシリーズのうち、アンリミテッド:サガ以来14年ぶりの家庭用機向けの完全新作にあたる本作。星神を裏切った邪神・ファイアブリンガーの七度の襲撃を退けた帝国が内乱で瓦解してから70年後の世界を舞台に、ある者は帝国再興のため、ある者はおとぎ話に出てくる都を探すためなど、それぞれ異なる理由で四人の主人公が旅立つことになる。ある程度の大枠はあるが、ストーリーの攻略順序やイベントの発生の有無はプレイヤー任せというシリーズ伝統のフリーシナリオ制に、街もダンジョンも存在せずワールドマップ上のみで物語が展開するフリーワールドシステムを組み合わせた斬新なゲーム性が特徴である。戦闘は敵味方ともに行動順と行動の内容が可視化されたタイムラインに、連撃や陣形、閃きといった様々な戦略的要素が絡み合うことで、一戦一戦に重みがある濃厚な体験を味わうことができる。RPGらしい探索要素を大幅に削ぎ落とす代わりに豊富な分岐をつくり込んで高い自由度を実現した意欲作に仕上がっている。後にロード時間の削減や多数の調整および新要素を加えた緋色の野望がスイッチ、PS4、Steam、アプリ向けに登場した。

本作の音楽を担当するのは伊藤賢治氏。サガシリーズおなじみのフリーランスの作曲家である。オーケストレーターとして亀岡夏海氏と山下康介氏が、アレンジャーとして上倉紀行氏、成田勤氏、弘田佳孝氏が参加している。緋色の野望の追加曲も含めて作曲はすべて伊藤氏が担当しているが、編曲は氏自らが手がけているものもあれば、オーケストレーターやアレンジャーの面々が手がけているものもある。本作でも例に漏れず優雅で情熱的な楽曲群が揃っていて、オーケストラ楽器はもちろんのこと、二胡やスパニッシュギターといった民族音楽要素も取り入れている。サウンドトラックは主題歌も含めて2枚組で収録されている。

神獣や神の僕といった星神に関連する敵との戦闘で流れるのがこの曲である。開始早々にストリングスが荒ぶって一度聴いたら忘れられないほどの強烈なインパクトを生むと、その後もその第一印象を上書きし続けるような濃密な旋律を紡ぐ。主旋律を務める楽器は、イントロ明けの10秒からは渋めなシンセ、34秒からは厚みのあるブラス、1分手前のサビでは限界を超えて華やかに響き渡るバイオリンへと入れ替わり、楽器が変わっても勢いが衰えることなく、むしろ勢いに拍車をかけて主旋律を継承していく。サビが終わった1分27秒からは、以前シンセが奏でたフレーズをエレキギターがなぞることで、また一味違ったドラマチックな趣を見せる。哀愁も情熱も昂揚感も疾走感も何もかもが高純度で混ざり合った、戦闘曲の極致のような一曲である。

2021年のトリは全力全開のイトケン節でどうぞ。良いお年を。