VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1057 『Aランクサンダーの歌』(小川史生/Aランクサンダー 誕生編/MCD)

www.youtube.com

日本テレネットがおくるアドベンチャー・Aランクサンダーより、

小川史生作曲・三好敏彦編曲、『Aランクサンダーの歌』。

主題歌(唄:子門真人)で、オープニングで流れます。

特撮ヒーローものを題材にしたオリジナルのメガCD用アドベンチャーとして登場した本作。政府転覆を企む秘密結社ブルズ・アイによって異形の超人「Aランクサンダー」に改造された記憶喪失の主人公は、施設から脱走し、迫りくる結社の脅威と戦うことになる。各話にOPやED、次回予告などがあるテレビ仕立ての構成をとっていて、主人公が変身するサンダーが一般的なヒーロー像とは一線を画する怪物のようなデザインである点が特徴である。アドベンチャーパートでは主に主人公の反応(聞く・憤慨・悲観)を選んでコマンド選択式の会話シーンを進め、戦闘パートでは行動内容に応じてカードを選ぶターン制のカードバトルを進めていく。メガCDのハード性能を活かして台詞はボイス付きという充実ぶりが魅力だが、全体的に戦闘のテンポが遅めであるほか、誕生編のみの発売で物語は未完である。当時の特撮ものの雰囲気をゲームで体験できる意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは故・小川史生氏、近藤昭雄氏、平沢悦章氏、福島尚哉氏、三好敏彦氏、YUJI氏。小川氏は本作のプロデューサーも兼任している、当時日本テレネットに所属していたクリエイターである。三好氏は普段アレンジなどを手がけるサウンドクリエイターで、本作のボーカル曲(いずれも小川氏作曲)は氏が編曲している。本作は仮面ライダーなどでおなじみのベテラン歌手・子門真人氏がボーカルを担当しているのが大きな目玉要素で、主題歌はもちろん、エンディングや挿入歌もピーター・サイモン名義で歌い上げている。ヒロイックなものや感傷的なバラードなど絶妙にツボを押さえた楽曲が揃っている。サウンドトラックは未発売だが、OP映像のクレジットや取扱説明書にボーカル曲の曲名や作編曲者の内訳が示されている。

各話のオープニングで流れるのがこの曲である。イントロからいかにもな哀愁と疾走感が漂う曲調で始まり、12秒頃にハープのような音階が流れ出すと、それに合わせて映像中にタイトルロゴが表示される。続いて歌声が入ると、その独特な深みを帯びた歌い方が瞬く間に本作の世界観へと引き込んでくれる。歌声そのものの魅力に加えて、20~22秒、25~28秒など、ワンフレーズを終えるごとに響くシンセが心地良く興を添える。40秒頃で「戦えサンダー」と痺れるような渋さで歌うと、映像中で変身シーンを挟んで徐々に勇ましさを蓄える。いよいよ迎えるサビのラストフレーズで、折よく(閃光!)と叫ぶことで、まさしくヒーローソングの醍醐味と言えるような熱唱を披露してくれる。間奏の後に再びBメロから開始すると、派手に戦闘する映像と相まって、すでに十分高まったはずの昂揚感をさらにもう一押し刺激する。王道を征く非常に格好良い一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。作詞は吉岡たかをさんによるもので、歌詞も良い味出してますよね。EDと挿入歌は別の方が作詞されてますが、そちらも雰囲気満点です。EDの『闘え!Aランクサンダー』(2:11~)と挿入歌の『乱由鷹の歌』(4:43~)、あわせてどうぞ。

www.nicovideo.jp