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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1461 『ラストバトル』(オプティム/キュイーン/PS)

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メディアエンターテイメントがおくるファンタジーシューティング・キュイーンより、

オプティム作曲、『ラストバトル』(仮称)。ラスボス戦で流れます。

日本テレネットの元スタッフが起ち上げたメディアエンターテイメント製のシューティングとして登場した本作。掃除機が大好きな仲良し兄妹のひろ君とあいちゃんは、童話を夢中で読んでいたところ、助けを求める本の妖精の呼び声に応じ、悪い魔法使いに支配されたという童話の世界で掃除機に乗って戦うことになる。グリム童話を題材にした2人同時プレイ可能な全7面構成の横スクロールシューティングで、主人公は幼い子供で自機が掃除機というファンシーさが特徴である。攻撃手段は通常弾、道中で拾える4種の武器(3方向バルカン、貫通レーザー、ホーミング弾、高速射撃のラピッド)、ボム代わりのクリア砲に加え、掃除機の特性を活かして電源コードを後方に射出する一風変わった攻撃を繰り出すこともできる。さらに本作の目玉要素として敵や弾をノズルで吸い込んで一撃で倒す吸引システムが搭載されている。うまく吸引することで通常よりも高得点を得られるほか、クリア砲を放つのに必要なゲージが溜まっていく。このように、児童向けな雰囲気を漂わせつつもシューティングとしてのつくりは堅牢で、後半に進むほどぐんぐん上昇していく難易度と相まって満足感のある遊び応えを誇る。総じてメルヘンチックで奥深い仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはオプティム。歌手の森千秋氏とキーボード奏者兼作曲家の上村茂三氏から成るユニットである。また、主題歌の作曲はメディアエンターテイメントの設立者である故・小川史生氏が手がけている。本作では童話らしさを存分に表現したポップでファンタジックなサウンドが揃っていて、各ステージの中ボス戦用の曲も含めて楽曲数が豊富に用意されている。基本的には木管楽器やストリングスのピチカートなどを用いた緩くて朗らかな作風が目立つが、なかにはダークなオルガンやスリリングなシンセを駆使した緊張感あふれるものも存在する。オープニングとエンディングそれぞれにボーカル曲があてがわれているなど、全体的にサウンド面に注力している様子が窺える。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

ラスボス戦で流れるのがこの曲である。背景に本が漂う異空間で諸悪の根源たる悪い魔法使いと戦うことになる。ラスボスというだけあってなかなかしぶとく、敵を召喚したり鏡の盾で身を守ったりするなど多彩な動きで翻弄してくる。そうしたなか、冒頭から荒ぶるストリングスでぐっと昂揚感を高め、ヒロイックさ全開のオーケストラ演奏を披露することで、さながらRPGの勇者になったような気分に浸らせてくれる。14秒からはツィターを彷彿させる民族風の打弦楽器の音色が入り、20秒や27秒などで伴奏にコーラスを添えると、勇ましくも幻想的な雰囲気に包まれていく。十分に勢いを蓄えた後、28秒以降でツィターもコーラスもオーケストラも一緒くたになって壮大なアンサンブルを紡ぐことで、クライマックス感あふれる盛り上がりをみせる。ややあって38秒頃でにわかに太鼓が目立ち出すと、42秒からストリングスのフレーズを挟んで仕切り直す。その後再びメインメロディーを奏でるが、以前と比べてキーが上昇しているうえに楽器が変わっている。1分過ぎでツィターが再参戦するときのインパクトは絶大で、最後まで聴き応え満点の曲調を貫き続ける。最終決戦にふさわしい最高潮のテンションに満ちた一曲である。

聴いていると芯から熱くなるような、迸る気迫があって良いですね。