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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1055 『人が語り継ぐ限り』(光田康典/SOUL SACRIFICE DELTA/PSV)

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SCEがおくるアクション・ソウルサクリファイスより、

光田康典作曲、デルタの『人が語り継ぐ限り』。エンディングで流れます。

ダークファンタジー調の共闘アクション(いわゆる狩りゲー)として登場したソウルサクリファイスのグレードアップ版にあたる本作。凶悪な魔法使いに生贄として囚われた奴隷の主人公は、牢獄で喋る魔術書・リブロムと出会い、中に記されていたとある魔法使いの日記を読むことで、日記の物語を追体験して己の運命に立ち向かうことになる。基本的なシナリオやゲーム性は共通しているが、新たな勢力や真の結末が追加されたほか、戦闘面では複数の技を組み合わせて強力な効果を引き出す魔法連携という新要素が加えられた。魔物の種類が増え、グラフィックやモーションも進化し、新規マップの導入とあわせて既存マップにも調整が加えられるなど、追加要素は多岐にわたる。無印の完全版であると同時に、続編並みのボリュームがある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは鋒山亘氏と光田康典氏。鋒山氏は映画音楽の方面で活躍するロサンゼルス在住の作曲家で、光田氏は音楽制作会社プロキオン・スタジオの代表である。いずれも無印版から続投している。本作では各種神話や伝承を下敷きにした濃密なファンタジー世界を彩るにあたって、壮大なものから繊細なものまで、妖しげだが切なさもあるオーケストラサウンドが揃っている。追加曲でも同じ路線を踏襲していて、造語歌詞によるボーカル曲なども用意されている。サウンドトラックは無印の音源を収録したものが存在するほかに、本作の新曲を収録したものが予約購入限定特典として同梱されていた。

エンディングで流れるのがこの曲である。真の結末におけるスタッフロールはもちろん、イベントでもときにはオフボーカルの状態で流れることがある。造語歌詞による主題歌で、ピアノの静謐な伴奏に芯のある歌声が重なり合うことで、瞬く間に心揺さぶる没入感を生む。メインボーカルのほかに、バックコーラスが幻想的な合唱を披露すると、その魔術的な組み合わせが天にも昇るような聴き心地を醸し出す。造語の響きは英語を基にしているらしく、それゆえどこか聴き覚えがあるような、それでいて今一歩聴き取れない、浮世離れしつつも耳馴染みする絶妙な塩梅で調整されている。憂いを湛えているが、前向きさをも感じさせる曲調が印象的で、エンディングを迎えてさらにその先へ、物語は終わるのではなくここから始まるという感覚を強めてくれる一曲である。

12曲まとめていただいたリクエストの第10弾です。無印のエンディング『希望は未来の頁とともに』(同じく光田さんによる)も似た雰囲気の良曲ですね。あわせてどうぞ。

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