VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1340 『メインメニュー』(茶木佐知子・平沢道也・森彰彦/超空間ナイター プロ野球キング/N64)

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元気がおくる野球ゲーム・プロ野球キングより、

茶木佐知子・平沢道也・森彰彦作曲、『メインメニュー』(仮称)。

メインメニュー画面で流れます。

ニンテンドウ64初期の野球ゲームとして登場した本作。96年当時の実名の球団と選手たちを用いて試合を楽しむことができる。同ジャンルのなかでもいち早くフルポリゴンを導入した点が最大の特徴で、キャラはデフォルメ頭身で個々の顔グラフィックや仕草が充実しているほか、球場は3D空間で描かれた計15種類のロケーションが用意されている。64コントローラの3Dスティックを駆使した直感的な操作や、塁の配置と一致するCボタンユニットの送球コマンドなど、指に馴染みやすい良好な操作性を実現している。搭載されているモードは、オープン戦、ペナント戦、各種練習をおこなう育成、選手を作成したり編成したりできるエディットの主に4つである。シネマチックなカメラワークや比較的抑えめな実況音声などと相まって全体的な方向性は本格仕様に見えるが、それとは別にお茶目な演出やリアリティ度外視の要素も含まれる。一例として、三振するとバッターが石化したり凍り付いたり、球場のなかには宇宙空間を舞台とするものがあり、重力の違いにより球がやたら伸びたりする。3Dデフォルメ調ならではの触り心地と遊び心が融合した仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは茶木佐知子氏、故・平沢道也氏、故・森彰彦氏。いずれも当時、音楽制作などを請け負う株式会社ミントに所属していたサウンドスタッフ(平沢氏は創業者)である。三名ともこれまでの担当作品をみると、作曲よりも主にサウンドプログラムやサウンドデザインを手がけてきたようである。本作のスタッフロールでは一括でサウンド欄にまとめられている。本作の楽曲は明るくまったりとした曲調を中心としていて、実際の試合中は応援曲や歓声が目立つ臨場感のある雰囲気を楽しめる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

メインメニュー画面で流れるのがこの曲である。出だしからノリノリな印象に満ちたダンディーなベースラインの上を、断続的に鳴り響くトランペットのつんざくような音色と、伸び伸びと奏でられる電子オルガンが駆け抜けることで、開始数秒足らずで耳にすっと入ってきて着実に昂揚感を駆り立ててくれる。18秒からすこし流れを変えて、ちょっぴりミステリアスでアンニュイな雰囲気が漂うようになるが、そうしたなかでもベースとドラムは相変わらず快い勢いを保っている。さらに27秒からしっとりと寄り添うようにシンセオーケストラが加わると、曲全体を貫く躍動感あふれるムードと組み合わさって絶妙に程よい聴き心地を生む。1ループ35秒ほどとコンパクトな尺でたっぷり気持ち良く気分を盛り上げてくれる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。すぐ耳に馴染むし、ずっと聴いていられる感じのする素敵な曲ですね。