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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#958 『イオンとう』(上田絹代・水谷郁・水谷寿子/携帯電獣テレファング パワー・スピード/GBC)

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ナツメがおくる育成RPG・テレファングより、

上田絹代・水谷郁・水谷寿子作曲、『イオンとう』(仮称)。イオンとうで流れます。

携帯電話とモンスター育成をテーマにしたRPGとして登場した本作。特殊な携帯電話・Dショットを使うことで電獣たちが住む電獣界に行ける近未来を舞台に、小学生の主人公は偶然拾ったDショットに導かれるがままに電獣界に足を踏み入れ、様々な問題を解決することになる。電獣は捕まえるのではなく、戦闘等を通じて仲良くなって電話番号を交換することで、次回以降の戦闘に呼び出せるようになる仕組みで、電話で話すという性質上、電獣は人語を解するし、ときには呼んでも用事があって来てくれない場合もある。技や進化はもちろん、図鑑や通信対戦、それにバージョン違いで2作同時に発売されるなど、いかにも育成RPGらしい要素が目立つが、携帯電話っぽさを前面に押し出したUIやシステムが特徴で、それなりに独自性のある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは上田(山下)絹代氏、水谷郁氏、水谷寿子氏。上田氏はフリー、水谷両氏は当時ナツメに所属していた作曲家である。ナツメ製の作品ではメダロットシリーズなどで作曲経験がある面々として知られる。本作はポップな作風にあわせた元気溌溂としたサウンドに、デジタルな世界観ならではの怪しさや緊張感が融合したメロディアスな楽曲が揃っている。サウンドトラックは未発売、作中にサウンドテストは存在するものの曲は番号のみで表記されるため、曲名は便宜上の仮称とする。

イオンとうで流れるのがこの曲である。元は閑静な島だったが、今は電波の取り合いで争っている真っ只中、そうした穏やかならぬ状況を重めに響くイントロで印象付ける。13秒や15秒あたりでピロリと高音が鳴ると、さながら電話のプッシュ音のような響きがあり、シリアスなメロディーラインに鮮やかな興を添える。はじめは重厚で不穏な曲調だが、26秒以降は明るめな雰囲気に転じ、小気味よいリズム感を保ちながら徐々に音程が上昇していく。さらにこの勢いで高音域に到達するかと思いきや、41秒でイントロに回帰し、1ループが完結する。明るすぎず暗すぎず、適度な刺激を持つ一曲である。

テレファングシリーズは戦闘曲の気合の入りようはもちろん好きですが、フィールド曲のテイストも好みです。せっかくなので通常戦闘曲もあわせてどうぞ。

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