VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1463 『SHIFT UP PASSAGES』(冷牟田卓志/GALLOP/AC)

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アイレムがおくるシューティング・ギャロップより、

冷牟田卓志作曲、『SHIFT UP PASSAGES』(『ZONE C』とも)。3面で流れます。

R-TYPEシリーズで知られるアイレム製のアーケード向けシューティングの一作である本作。退廃感のある近未来都市を舞台に、原因不明の大型兵器暴走事件を鎮圧すべく、武装警察の戦闘機・R-11 "PEACE MAKER"が出動することになる。全5面×2周構成の残機制横スクロールシューティングで、レバーを倒す方向(=画面上の自機の位置)によってスクロール速度が変わる任意可変式スクロールシステムを採用している。レバーを右に倒すと自機が加速し、左に倒すと減速する仕組みで、各ステージにはクリアタイムを測るタイムアタック要素と、それに応じたスコアボーナスが用意されている。攻撃手段は連射可能なバルカンと、エネルギー制で追尾性能のあるロックオンレーザーが標準搭載されていて、さらに道中のユニットを入手することで対空ミサイル、投下型のナパーム弾、地を這うトーピードの3種のサブウェポンが使えるようになる。自機は大きく、敵は手強く、加速するほど迫る脅威に対処しづらくなる一方で、地形にぶつかってもサブウェポンが外れるだけでミスにはならず、テクニック次第でギミックを突っ切ったり敵の攻撃を高速で掻い潜ったりすることができる。歯応えと疾走感に満ちた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは冷牟田卓志氏。作中にスタッフロールは存在しないが、サウンドトラックや氏の言及等を通じて作曲者が判明している。当時アイレムに所属していた作曲家である。本作はR-TYPEシリーズの関連作として世界観を共有しているが、サウンドの方向性は本家でみられたような切迫感と重厚感を帯びたものとはすこし異なり、レースゲーム風のタイムアタック要素を取り入れた作品らしく派手で調子の良い楽曲が揃っている。とりわけ本作は緻密に描き込まれたサイバーでメタリックなグラフィックが目を引くが、楽曲もそうした雰囲気に寄り添ったスピーディーでハイカラな作風を特徴とする。サウンドトラックについては、アイレムレトロミュージックコレクションのなかに本作の楽曲が収録されているほか、R-TYPEシリーズの楽曲を集めたサウンドボックスのなかにも本作の楽曲が含まれる。曲名は両者で異なるが、ここでは後者に倣うものとする。

3面「ZONE C」で流れるのがこの曲である。遠景には山が見え、夜の都市を一望しながら進むことになる。さながら夜景ドライブのような雰囲気を彩るにあたって、この曲はアーバンでファンキーなグルーヴ感に満ちあふれている。6秒から執拗に繰り返す金属質なフレーズが特徴的で、22秒からメインメロディーが加わると渋さと快さを兼ね備えた独自のリズムで魅せてくれる。最初から最後までブレることなく洒落た曲調を貫き通すなかで、特に1分10秒以降で低音から高音まで自在に操って一際クールな展開をみせる点が印象深い。1分30秒からはさらに畳みかけるようにガンガン音色を鳴らし、1分50~54秒では目まぐるしく音階を上り下りして力強いインパクトを生み続ける。非常に派手であると同時に聴き飽きない魅力を持つ一曲である。

近未来の夜の都市を高速で疾駆する武装警察、というイメージにすごくぴったりですね。格好良いです。