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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1219 『STAGE-D イリュージョンデザート』(平田健一/ガーディアンフォース/AC)

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サクセスがおくるシューティング・ガーディアンフォースより、

平田健一作曲、『STAGE-D イリュージョンデザート』。STAGE-Dで流れます。

コットンなどで知られるサクセス製のアーケード用シューティングとして登場した本作。超エネルギー結晶体・フォースを利用して勢力を強めるハンマーボルト帝国に対し、その危険性を察知した秘密結社・ガーディアンは、フォースの力を持つ戦車を送り込み、帝国の野望に立ち向かうことになる。練習ステージ+実戦ステージ7面から成る全8面構成の多方向強制スクロールシューティングである。自機が戦車であり、全方位で戦う性質上、砲塔の旋回(ショットの向きの調節)という概念が備わっている点が特徴である。8方向レバーで移動し、3ボタンでそれぞれショット・砲塔の左旋回・右旋回が、ボタン同時押しでスペシャルウェポンが割り当てられている。武器は取得するアイテムに応じて5種類、サブウェポンのミサイルは2種類用意されている。操作の慣れや武器の使い分けなど習熟を要するゲーム性であるうえに、世界観やビジュアル面は徹底的に飾らないSF路線を採用しているなど、全体的に硬派かつ盤石な仕上がりとなっている。後にセガサターンに移植されたほか、スイッチ、PS4、Steamに再移植された。

本作の音楽を担当するのは田子(関口)美佐子氏と平田健一氏。いずれも当時サクセスに所属していた作曲家である。サクセス製シューティングでいうと、平田氏はコットンシリーズで、田子氏は後のサイヴァリアシリーズで馴染み深い。本作ではいかにも90年代のオールドスクールシューティングらしい、マットな質感だがキャッチーな楽曲群が揃っている。各ステージに道中曲もボス戦も専用のものがあてがわれていて、曲数が充実している。サウンドトラックについては長らく存在しなかったが、稼働から20年以上を経てコットンの再移植とセットになった特装版に同梱された。

STAGE-D「イリュージョンデザート」で流れるのがこの曲である。幻影の砂漠を意味するステージ名の通り、道中は似たような景色の紫がかった砂漠が続く。そうしたなか、出だしからしばらくの間、不思議な躍動感のあるフレーズを繰り返すことで、徐々に癖になるようなリズム感を生み出す。イントロが明けてAメロが入るまで40秒強かかるが、三分の一ほど過ぎたあたり(14秒頃)でピアノが加わって小気味良い響きに磨きをかけたり、さらに進んで三分の二あたり(28秒頃)でエレキギターが加わって曲調が変わったりするなど、飽きさせない工夫が凝らされている。ようやく入る主旋律は凛々しいようでどこか控えめな哀愁を帯びていて、伴奏として小刻みに掻き鳴らされるベースと相まって、独特な悲壮感を漂わせる。特筆すべきは1分40~53秒のギターパートで、ゆったり長めに響くその音色は、鮮やかで開放的であると同時に、切なく感傷的な印象を湛えている。以降も転調を交えるなどして、勇ましさと哀しさをバランスよく表現している。全体を通してしっかり聴き入らせてくれる一曲である。

あまり激しい曲調ではありませんが、心に訴えかけてくる良さがありますね。