VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1314 『STAGE 1』(星恵太/オルディネス/PCESG)

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プロデュースがおくるシューティング・オルディネスより、

星恵太作曲、『STAGE 1』。1面で流れます。

PCエンジンの上位機種であるSUPERGRAFX専用作品として登場した本作。未知の侵略者により地球が危機に陥るなか、恋人の敵を討つべく主人公のヒロコ=A=FOXはNASA秘蔵の超兵器・オルディネスで戦うことになる。全7面構成の横スクロールシューティングで、ハードの描画性能をフル活用した入魂のグラフィックが特徴である。滑らかな多重スクロール、多関節や変形を通じて自在に動く巨大ボスなど、目を見張る要素が多く搭載されている。シューティング部分のつくりは、自機のパワーアップがあり、通常のショットのほかに取得アイテムに応じて4種のレーザーを使えるようになるなど、ごく王道な部類に入る。これに加え、4機まで装着可能なシャトルというオプションがあり、制御方式をマニュアル(自機の攻撃にあわせて援護射撃)かオート(自動索敵&攻撃)に切り替えられたり、自機の周囲で高速回転させて攻撃と防御を同時に担わせたりできる。シャトルは戦力的に重宝する一方で、地形に引っかかりやすい、索敵や射撃の精度は今一つ、といった欠点も目立つ。全体的に敵の配置がシビアで、復活時に自機の強化状況が初期状態に戻されるため、相応の根気を要する難易度を誇るが、非常に見映えするパワフルな仕上がりとなっている。後にゲームアーカイブスの一環としてPSNで配信されたほか、PCエンジンminiに収録された。

本作の音楽を担当するのは星恵太氏。スタッフロールではK.HOSHIという表記である。当時、本作の発売元であるハドソンに所属していた作曲家である。SUPERGRAFX対応作品という括りでは本作以前にも大魔界村の移植に際するサウンドを担当したことがある。PCエンジン製シューティングという括りではスーパースターソルジャーの担当経験がある。本作ではビジュアルに負けじとサウンドにも力が入っている。作中では物語に直接触れる機会はないが、女性主人公の復讐劇というバックストーリーにふさわしい、勇ましくアップテンポながらも物悲しげな楽曲が揃っている。サウンドトラックについては、歴代ゲーム音楽を厳選収録したLEGEND OF GAME MUSICのコンシューマー盤に本作の楽曲が含まれる。

1面で流れるのがこの曲である。ステージの多くは見慣れない敵地で展開するが、1面は開始直後ということで手始めに地球にて制空権の奪回を目指すことになる。そうしたシーンを彩るにあたって、冒頭から鮮やかに疾駆するフレーズで始まり、早々に気持ち良い昂揚感をもたらす。6秒頃でつっかえるようにしてドラムが連続で鳴り、それに呼応して7~9秒でにわかに音階を駆け上り、頂点に達したあたりで明白に一区切りつけることで、イントロ明け9秒以降のヒロイックな旋律へとスムーズに繋がっていく。全体的に力強い曲調ではあるものの、どこか悲しい響きがあり、悲しいがゆえに鬱憤を晴らそうとしているかのような衝動的な勢いがある。20~22秒で高音を披露した後、畳みかけるように23秒から新たなフレーズへと移行し、そこからしばらくは似た調子で反復するも、38秒でアラートを発するかの如く鮮烈な音色を響かせて流れを変えるなど、各フレーズの繋げ方が印象的で耳で追いやすい。加えてドラムの厚みが魅力的で、39~53秒で長く見せ場が設けられるなかで、その芯のある打音を存分に堪能することができる。前に進む度胸と覚悟が感じられる一曲である。

プログレっぽくてすごく良いと思います。