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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1315 『Lohengrin』(西木康智/グランブルーファンタジー ヴァーサス/PS4)

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CygamesのソーシャルRPGグランブルーファンタジーを原作とする、

アークシステムワークスがおくる対戦アクションRPGグラブルヴァーサスより、

西木康智作曲、『Lohengrin』。パーシヴァルのテーマとして流れます。

Cygamesの代表作であるスマホRPGグランブルーファンタジーのスピンオフとして、GUILTY GEARシリーズなどで知られるアークシステムワークスが開発した本作。空を旅する青年・グランは、何者かに操られたかつての仲間たちと剣を交えながら異変の元凶に迫ることになる。ストーリー仕立てのRPGモードと、2D対戦格闘を楽しめるVersusモードの2種類の遊びが用意されている。前者はベルトスクロール式で進める戦闘のほかに、フルボイスの会話シーンやキャラの育成、ガチャ形式の武器システムなど、コンパクトながらもグラブルらしさが感じられる要素が揃っている。後者は11人(+DLC参戦13人の計24人)のキャラがプレイアブルで、CPU・2P・オンライン対戦、ソロ用のアーケードモード、トレーニングなど、一通り収録されている。操作に関しては、格ゲー入門者でもワンボタンで派手なアビリティを放てるとっつきやすさを特徴とするが、技にはクールタイムが設けられていて、ワンボタン入力の代わりにテクニカル入力(適切な組み合わせでのコマンド入力)を用いると再使用時間が短縮される。また、ガード・回避・コンボ・硬直といった諸々の駆け引きも絡んでくるため、本気で対戦するには相応の実力が問われる。格ゲー版グラブルというコンセプトに忠実な仕上がりとなっている。後にSteamに移植された。

本作の音楽を担当するのは植松伸夫氏、成田勤氏、西木康智氏、千葉梓氏、鴇沢直氏、前澤ヒデノリ氏、山崎淳氏、bassy(石橋弘史)氏、Johnny.k(川羽田敍新)氏。Cygames所属の千葉氏を除き、主にフリーランスで活躍する作曲家たちである。このうち植松氏と成田氏は原作の作曲を、西木氏はアニメ版の劇伴を、鴇沢氏らはキャラクターソングの作編曲を担当したことがあり、シリーズにゆかりのある布陣が集結している。作品の性質上、本作オリジナル曲のほかに原作やアニメの既存曲をアレンジしたものもすくなくない。格調のあるオーケストラ系のファンタジーサウンドと、格ゲーのイメージに合ったロック系やボーカル入りなどの熱い曲調を掛け合わせたものが揃っていて、なかにはダンサブルなノリが感じられるものまで存在する。サウンドトラックについては通常盤のほか、DLC追加曲を収録したものも発売されている。

パーシヴァルのテーマとして、彼と対戦する際に流れるのがこの曲である。作中の四騎士の一角で、自ら炎帝と名乗り、己が理想の国を興すべく家臣探しの旅をしている。一見不遜だが、心根は強く気高く実直な、まさに王の器を持つ人格者である。本作においてはリーチの長い剣や派手な炎の攻撃、自己強化技を駆使した立ち回りをみせる。そうした特徴を踏まえて、冒頭から仰々しく鳴るオーケストラヒットとコーラスで凄絶な第一印象を植え付け、その後もエレキギターチューブラーベル、ストリングス、17秒頃からはオルガンも交えて貫禄と威厳のある雰囲気を目一杯漂わせる。28秒で本格的にイントロが明ける直前、24~27秒で戦慄を与えるような異様なぎらつきを放つが、以降は王道をひた走るシンフォニック・ハードロック然とした曲調を披露する。ギターが中心となってフルスロットルで響くパートと、1分13~28秒のようにストリングスが中心となって重く焦らすように響くパートが交互にやってくることで、中弛みすることなく激しさを維持し続ける。2分4秒からしばらくギターが即興風のフレーズを奏で、3分47秒以降にもまた鮮やかな演奏をみせるなど、曲を通して見せ場が尽きない。雄渾にして峻烈な一曲である。

曲名にあるローエングリンは、出典のアーサー王伝説だとパーシヴァルの息子の名前、作中だと彼の武器の名前ですね。偉く格好良いです。